4 「MAYDAY, MAYDAY, MAYDAY;」
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る可能性の方が圧倒的に高い。
(どうする……!)
ギュ...
1頭、凪から向かって右。ギギネブラの足元の雪が、軋んだ―――
―――それは、竜の足に力が伝わったということ。
それを理解するより数コンマ速く、凪は汀を前方高く投げ飛ばすと岬を担ぎ菖蒲を突き飛ばした。呆然としている岬を雪に下ろすやいなや落ちてきた汀の背中と膝裏に見事に腕を差し込みキャッチ。
数瞬前まで4人がいた場所は、紫色の毒煙に包まれていた。
それを皮切りに、静寂が敗れる。
ギョォオアアアアアアア!!!!
(迷っている暇は……無い!)
「走れ!」
双子の背を強く押し出すと、思い出したように駆け出した。菖蒲と一瞬目が合う。それだけで伝わるのは、長年離れていたとしても家族であるからか――…
「すぐ行く! エリア6で!」
落ち合おう。
目があったのは一瞬。最後の言葉は飲み込んだ。必要無いと感じたからだ。菖蒲が頷いたのを気配で感じ、走り出す足音を耳にポーチからけむり玉を取り出した。3人が消えたエリア7方面への道に向かってそれを投げ、拭いたばかりの刀を鞘から抜き放った。一番近い1頭の頭を斬る。すぐに反撃に移られても逃げきれる、ぎりぎりの深さを狙ったそれは思いの外浅い一撃となってしまった。
すぐそばで流れた同族の血の臭いにつられて、残りの3頭も凪に注目をあつめた。
「よしよし。それじゃあ……一丁、地獄の追いかけっこと洒落込もうか!」
“気”を込めた刀が空を裂く。銀火竜の炎が凍土に燃え、それは紅蓮の壁となってギギネブラの足を止めた。
涼やかな音をたてて刀を納める。
それが始まりの合図。
凪は雪に足を取られることもなく、渓流のケルビのように軽やかに走り始めた。向かう先はエリア3。そこには雪の隙間からわずかに生える草を求めるブルファンゴたちがいた。数は4頭。それを瞬時に脳内で数えるとひとり頷く。行ける。
「悪いね、利用させてもらうよ」
腰から剥ぎ取りナイフを取り出すと、風のような速さで3頭の尻を浅く切った。切れ味より頑丈さを重要としたナイフだから、切るというよりは「裂く」が近いかもしれない。
ブヒィ―――!!
四方八方に走り出すブルファンゴ。1頭はエリア5の洞窟へと向かい、もう1頭はエリア1に向かって行った。最後の1頭はエリア2へと逃げようとした―――そう、今凪が来た方面へと。
ヒギィ―――!
つい最近、ユクモの地で嫌になるほどたくさん聞いた、甲高い断末魔。ファンゴのものだ。ギギネブラたちが迫ってきた熱源を凪と勘違いして襲いかかったのだった。
それを目の端で捉えた凪は、ひょいと馬に乗るように平然と最後のブルファンゴにまたがって、ナイフをその尻に刺した
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