4 「MAYDAY, MAYDAY, MAYDAY;」
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な ん じ ゃ こ り ゃ。
気がつけば前後左右をギギネブラに囲まれていました。マル。
(……いやいやいやいや!)
通常の4倍の声量のバインドボイスは、耳を塞ぐ程度では済まない音の暴力となって凪達を襲った。
悲鳴を上げてしゃがみ込む汀と岬、菖蒲。凪は立ったままではいたものの、ガンガンと頭に残響する竜の怒りは視界を真っ白に覆うほどのものであった。足がふらつく。長年の渓流暮らしに加えて生まれつき常人よりもやや耳が良い凪にこの咆哮は酷だ。
しかし、彼よりさらに状態の悪い者がいた。双子だ。この衝撃で完全に精神が折られてしまった。
(無理も無いが……)
四方を飛竜に固められる何て経験、したくたってそうそうできるものではない。まだ14歳の子供でもあるし、確かに仕方がないともいえる。が、この状況では非常にまずい。逃げるにしろ戦うにしろ、迫り来る“死”と闘う意志を捨てたものが最初に餌食にされるというのは、自然界での鉄則だ。
「ぁあ…あ……」
へなへなと座り込む2人。掴まれている服越しにわかってしまうほどに、2人はガクガクと震えていた。完全に腰が抜けてしまっている。
菖蒲は毅然とした態度を貫いてはいたが、その顔色が既に青を通り越して白になりつつあるのは、決して寒さのせいだけではあるまい。
(どうする……)
この状態の3人を庇いながら戦うのか。
無理だ。
ギギネブラは遠距離攻撃の術を持っている。それも毒弾ときたら、いくら凪でもどうしようもない。
今4人と竜達の距離は50m弱といったところ。人ならば7、8秒はかかるだろうが、そんな距離竜にとっては有って無いに等しい。本気になればものの2秒で間を詰められるのは自明だ。
問題は、その2秒で何ができるか―――。
(安全な場所といえばベースキャンプ、だが……)
エリア2には障害物といった障害物がない。おまけに今はエリア4に近い場所にいるから、ここからベースキャンプに一直線に帰ったらまず間違いなく途中で追いつかれる。そうなったら―――奴お得意の技で毒死か、踏みつけられて圧死か、気絶させられて冷凍保存か、最悪生きたまま食われるかのどれかだ。
今、冷静にかつ確実に対処ができるのは、凪だけ。
菖蒲は頭は真っ白になっているだろうが、指示すればその通りに動いてくれるだろう。戦闘能力を失った子供2人を引きずって、遠回りながらもベースキャンプまで連れ帰ることができるのは、この場では彼以外いない。
出来れば凪が護衛につきたいが、この竜たちが目の前に転がっている獲物を見逃してくれるほど甘いと考えるのは、よほどの無知かただの馬鹿だ。
かと言ってひとり囮になるといっても、普通は数が多い方を竜は狙うだろうから、むしろ凪が無視されて3人が狙われ
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