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恋獄 ― Rengoku ―
第二話 昨日までの貴方は…ここにいる
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 生憎の曇り空から始まった六月一日、一人の少女の表情も浮かない。

 今にも泣き出してしまいそうなそれを隠すように机に突っ伏しているが、そろそろそれも限界だろう。


「ゆり、大丈夫か?」


 そう、誰かが声を掛けてきた。

 気だるさに眉を顰めながら顔を上げると、心配そうなグレーの瞳とぶつかる。

 ようやく冬服から夏服に衣替えをした天鴎(てんおう)高校は男女共に上は群青色のブレザーに白いシャツに黒地に白の格子柄のネクタイだからか、普段から首筋が見えるくらいに切り揃えられてある短髪だからか、目の前にいられるとドキドキしてしまうことも屡あるが、腰に手を当てこちらを覘き込む仕草を見せる人物は幸いなことに色はそのままのセーラー服を着用している。
 危うく倒錯な道に進んでしまうところだったと心の中で息を吐きながら微笑して見せるが、どう映ったのか伸ばされた腕によって優しく抱きしめられた。


「そんな顔をするなよ。私まで辛くなるじゃないか」


「ん、……ごめん」


 その肩をポンポンと叩いてみるが、その拘束は簡単に外れない。


和泉(いずみ)?」


「………………寝たのか?」


「えっ…」


「アイツに抱かれたのかっ!?」


「ちょっ、声デカい…」


「いーから答えろっ!返答次第によってはアイツマジでボコる!!」


「や、やめて!昨日何があったのかさえ知らないんだよっ」


「だから何だよっ!これ見よがしにこんな所に跡なんか付けて………………独占欲丸出しじゃないかっ!!」


 そう言うが早いか、誰もいないのを良いことに梶田(かじた)あああっ!!!と、教室内で叫ぶ。

 せっかくの美人が台無しである。

 体育祭も終わった今は中間テストの一週間前で、全ての部活動や委員会は停止され、授業も午前中で切り上げられるためこの時間に残っているのは恐らくこの二人くらいだろう。

 だからと言って、情を通わせた人物を声を大にして叫ばれると余計に意識してしまい、昨日のことを生々しく思い出してしまう。


『…愛してるっ』



 ……そう、…………確かに彼は言ったのだ。



 例え、もうその想いさえ消えてなくなってしまっても、割り切ることの出来ない蓮見(はすみ)ゆりの中ではそれを捨てられずにいる。


「そんな、に…目立……つ?」


 初めての熱に襲われながらも確か、制服から見える所には跡は付けないで欲しいと懇願したはずだ。

 顔を火照らせ、もじもじとした調子で聞くと桃原(ももはら)和泉(いずみ)はまだ興奮の醒めきらない表情でいやとだけ言ってそっぽを向く。


「……抱きしめなきゃ見えない位置だ。絶対、
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