アインクラッド 後編
Monochrome
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しは彼に声を掛けようとしたが、言葉が続かなかった。彼は一度こちらに視線を向けると、すぐに正面に戻し、部屋の中心に何事もなかったように鎮座している宝箱の蓋を開けた。再びけたたましいアラートがゴーレムと共に部屋に出現する……などと言うことはなく、彼は箱の中から幾つかのアイテムを取り出した。どうやらこの宝箱、罠を解除すると中にアイテムがポップするタイプのものだったようだ。
「発見者報酬だ」
彼はチラリとわたしを見ると、ピンク色の結晶を投げた。それは緩やかな放物線を描きながら飛んできて、慌てて出したわたしの両手にすっぽりと収まった。それを確認すると、彼は立ち上がって足早に立ち去ろうとする。
段々と小さくなっていく背中を目にした瞬間、氷のように冷たい恐怖と不安が再びわたしの背中に手を伸ばしてきて。
「お、おい、一体何を……」
「……行かないで……」
気付くと、わたしは部屋の半分を駆け抜けて彼の身体に縋りついていた。頭上から、彼の声が聞こえた。途中から聞き取れなかったのが、彼が言葉を止めたせいなのか、それともわたしの耳が言葉を受け付けなくなったせいなのかは分からない。
わたしは凍えた子供みたいに彼の背中に縋りつきながら、身体と同じくらい震えた声で言った。
「独りに……しないで……」
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