アインクラッド 後編
Monochrome
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数が多すぎた。徐々に後ずさっていき、やがて部屋奥の壁に背中がぶつかった。
ふと首を巡らせると、視界を埋め尽くす灰色のゴーレムたちが、重い巨体を引き摺りながら、ゆっくりとわたしに向かって歩を進めてきていた。何処を見ても、他のプレイヤーはいない。この逃げ出せない檻の中に居たのは、わたし一人だけだった。
そう感じた瞬間、言いようのない孤独感がわたしを覆った。頭の先から足先まで、身体全部が金縛りにあったみたいに硬直し、震えだす。コントロールを失った指から剣が抜け落ち、乾いた音を立てて床に転がる。脚から力が抜け、壁にもたれるようにしてその場にへたり込む。目の前で、ゴーレムが平べったい足裏を振り上げた。
(嫌……止めて……)
喉が言うことを聞かないわたしは、胸の中で必死に願った。けれど、ゴーレムがそんな願いを聞いてくれるはずもなくて、複数体から踏み付けを喰らってしまう。一応、この層でこのゴーレム相手なら、多少の不利をひっくり返すのはそんなに難しくない程度の装備とレベルをわたしは持っているし、一発や二発攻撃を喰らったくらいではピンチにはならない。でも、今みたいに全てがクリーンヒットになってしまえば話は別で、わたしのHPは今の攻撃で既に黄色く染まっていた。
――わたし、死ぬんだ。こんなところで、たった独りで。
頭上から強く叩きつけられたことによる眩暈の中、わたしは続けて振り下ろされるゴーレムの腕をぼんやりと眺めながら、冷たい壁に身体を預けた。直後――。
視界の端で蒼い欠片が微かに舞い、ほぼ同時に一陣の風が音もなくゴーレムの間を駆け抜けて、わたしにぶつかる寸前のゴーレムの腕を貫いた。そのままわたしの眼前で立ち止まると、同じように振り下ろされるゴーレムの腕を片っ端から逸らし始めた。半透明の風の刃がゴーレムの腕すれすれを滑り、そのベクトルを僅かに変える。だが、それは決して楽なことではなかったらしく、最後の一本を刀身ではなく柄の部分で殴りつけるようにして逸らすと、ミシッ、と言う嫌な音に鋭い舌打ちが上乗せされた。
それでもほぼ同時に振り下ろされた腕を全て逸らしきると、手に握った刃を高速で真一文字に薙いだ。すると、その軌跡から風が吹き始め、竜巻となってゴーレムの追撃を封じてしまう。更に数秒もすると、いつの間にか竜巻の中に紛れ込んでいた数本の投剣が一気に白い煙を噴出し、部屋の視界を消した。ここでようやく我に帰ったわたしは、あまりの煙の量に思わず口と鼻を腕で覆ってしまう。
――そして、数十秒後。竜巻と煙が晴れ、クリアになった視界にあったものは。部屋中を浮遊しながら消えていくゴーレムたちの蒼い残骸と、薄青いシャツと黒のスラックスを身にまとった一人の青年、マサキ君だった。
「……あ、あの……」
わた
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