アインクラッド 後編
Monochrome
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主街区に転移!」
「は、はいッ!!」
わたしは鞘から剣を抜くと、宝箱の蓋についたアラームを壊しながら精一杯声を張り上げた。わたしの記憶どおりなら、このダンジョンに《結晶無効化空間》のトラップはなかったはず。だとすれば、今すぐに転移すれば無傷で逃げ帰れる。
アラームが停止したのを確認し、剣の切っ先を出入り口でたむろしているゴーレムたちに向ける。後方で、パーティーメンバーが無事転移したことを告げるサウンドエフェクトが、きっちり五回鳴り響く。
一先ず他の皆が無事に帰還できた事に安堵しつつ、わたしは自分が転移するべくポーチを漁った。十メートルと少し先ではゴーレムの群れがこちらに向かって雄叫びを上げているが、足の遅いゴーレムから攻撃を受けるまでにはもう少し時間があるため、十分に間に合う……はずだった。
わたしはポーチに手を突っ込むと、手に触れた結晶を掴み取った。が、それは青色の転移結晶ではなくピンク色の回復結晶だった。再び手を入れ、結晶を掴む。今度は緑色の解毒結晶。
「もう! こんなときばっかり!」
苛立ったわたしは、剣を鞘にしまって両手でポーチを漁りながら中を覗き込んだ。散乱するポーションの瓶や結晶を乱暴に引っ掻き回して転移結晶を探す。
――だが。何度ポーチの中身を掻き分けて探しても、青色の結晶がその中から出てくることはなかった。
「ウソ、そんな……なんで……!」
唇から漏れ出したその言葉は、自分でも驚いてしまうほどに震えていた。冷たい不安が背中をゾクリと駆け抜け、頭で恐怖に変換されて指先を振動させる。
――ウソだ。絶対にありえない。
真っ白に染まった頭の中で、現実を拒否する言葉だけがぐわんぐわんと鳴り響いていた。前にフィールドに出たときは転移結晶は使わなかったから、ポーチの中には前に持って出たものがそのまま残っているはずで、今日はまだ使ってないのだから……。
「あっ……」
そこまで考えた瞬間、漂白されていた頭の中に、突然先ほどの記憶がフラッシュバックした。……見知らぬ青年に転移結晶を握らせた、たった十分前の光景が。
「あれが……最後の一個……?」
言いながら、わたしは自分の顔から血の気が引いていくのが分かった。ポーチの中身を?き回していた手が硬直する。直後、ぼんやりと映っていた視界に黒い影が射した。
はっとして見上げると、いつの間にか目の前にまで接近していたゴーレムが、灰色の岩石がレンガ状に積み重なった右腕を振り上げていた。咄嗟に後方に跳び退く。僅かに遅れて、ゴーレムの腕が唸りを上げてわたしがいた空間を貫く。それを合図にするように、周囲のゴーレムが一斉に雄叫びを上げながら突っ込んできた。剣と盾をフル活用して殺到するパンチをいなしていく。が、一人で捌ききるにはあまりにも
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