アインクラッド 後編
Monochrome
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――このとき自分が、致命的なミスを犯していることにさえ気付かずに。
「……大丈夫?」
「う、うっす」
わたしたちが近場のダンジョンに入ってから十分くらいが経った頃。わたしは彼らに対し、そう声を掛けた。すぐ後ろの少年が肯定の返事を返してきたが、その声色には力がない。ダンジョンに入ってから遭遇する敵も手強くなっているのに加え、一日の疲労が出てきたのだろう。
「……ねぇ、皆。そろそろ、帰ろっか」
流石に限界だと判断したわたしは、少し小さめの声で言った。口元がピクッと引き攣り、喉の奥から苦い唾液が湧き上がってくる。
「……そうっすね。流石にこれ以上はキツイっす。皆も、それでいいよな?」
少年が首だけで振り向いて問いかけると、他のメンバーも頷いた。どうやら、全員思うところは一緒だったらしい。
「それじゃ、出口はあっちだから――」
「あ、エミさん。その前に、あそこの宝箱だけ開けてきてもいいっすか?」
「うん、分かった」
何とか上手く話を持っていけたことに安堵の息を吐きつつ、わたしは答えた。ウインドウからダンジョンマップを呼び出しながら、小部屋の宝箱に向かう彼らの後に続き――ふと、足を止めた。
このゲームには、大雑把に分けて三種類の宝箱がある。一つ目は、レアアイテムやレア装備品が入ったもの。難易度の高いダンジョンの奥深くに設置されていることが多く、開けられるのは一度だけ。
二つ目は、ポーションや結晶、素材アイテムなどが入ったもので、こちらはダンジョンやフィールドのあちこちに存在しており、一定期間後に中のアイテムが復活するため何度もアイテムを得ることが出来る。
そして三つ目。アイテムや装備品ではなく、その代わりに様々な罠が詰め込まれた恐怖の箱で、ダンジョンの小部屋などに配置してある場合が多い。……そう。今まさに彼らが触れようとしている、あの宝箱みたいに。
「ダメッ!」
はっと気付いたわたしは、大声で叫んで駆け出した。このタイプのトラップは《罠看破》スキルでトラップか否かを確認できるのだが、彼らのレベルから推定できる熟練度では、この層で通用するかどうかはかなり微妙だ。
「え?」
わたしの声を聞いた彼らが頭上に疑問符を浮かべて反応するが、その手が止まるより一瞬だけ早く、宝箱の蓋を持ち上げてしまって。
――ウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!
そして、次の瞬間。けたたましいアラーム音とともに大量のゴーレムが出現し、わたしたちの背後にある部屋の出入り口を埋め尽くした。
「ちょ、お、えぇ!? アラームトラップ!?」
「落ち着いて! あいつらがこっちを囲んで攻撃してくるまでには、まだ時間があるから! 皆、慌てずにこの層の
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