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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
Monochrome
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だが、残りのポーションの量などからしてそろそろ引き上げることを考えないといけない。……だから、そろそろその話を切り出したいのだけど……。

「あ、う、うん。おめでとう」

 相手の勢いに押されたわたしは、いつも通り、笑って頷いた。そうじゃないって思うけど、口から出てくるはずだった言葉は、それよりももっと前で冷たい雲に呑み込まれて消えてしまう。
 ……これも、いつも通り。

「――ねぇ、皆」

 その後しばらくして、彼らの熱気が段々おさまってきた隙に、ようやくわたしは口を開いた。呼びかけを耳にした彼らが、一斉にこちらを向く。わたしはそれを確認すると、今まで胸のうちで燻っていた言葉をゆっくりと噛み締めながら吐き出そうとして――、

「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 不意に響き渡った悲鳴に声を遮られた。

「ここで待ってて。何かあったらすぐに転移して!」

 わたしは咄嗟にそう言い換えると、再び剣を抜いて叫び声に向かって走った。



 声の主は、思っていたよりも早く見つかった。元の場所から五十mほど先、小さな丘を一つ越えた辺りで、一人の男性がハチ型Mob数体に取り囲まれて襲われていた。男性は時折反撃するものの、慌てているのか全く当たる様子はなく、逆に技後硬直の隙に更なる追撃を喰らってしまう。頭上のHPバーは既に黄色に変色しており、猶予はなさそうだ。

「やあぁぁぁっ!!」

 剣を担ぐように構え、全力で地面を蹴り飛ばす。《ソニックリープ》が発動し、システムアシストに背中を押されたわたしの体が空中のハチめがけて飛翔する。

 男性を襲っていたハチがこの層に出現する敵の中では最もレベルの低いMobだったこともあり、わたしは特に苦戦することもなく数匹のハチを蹴散らした。最後の一匹を倒した後、《索敵》スキルで辺りに他の敵がいないか確かめる。

「あの……あ、ありがとうございました……」

 すると、襲われていた男性が声をかけてきた。わたしは剣を鞘に納めて振り返る。尻餅をついた状態でやや呆然とした視線を向けてきていたのは、線の細い、少し気の弱そうな青年だった。

「いいえ。……それよりも、大丈夫ですか? 大分消耗してるみたいですけど……」
「はい、何とか……」

 わたしが近寄って問いかけると、男性はポーションを飲みながら立ち上がった。が、その足取りはフラフラと覚束ない。

「本当に大丈夫ですか? 転移結晶を使ったほうが……」

 憔悴しきった様子の男性を心配に思ったわたしは、若干躊躇(ためら)いがちにそう言った。
 今飲んだポーションによって彼のHPは回復しつつあるが、それで精神的な疲労まで取れるわけではない。そして敵Mobとのエンカウントや罠など、様々なイレギュラーに瞬時に対応するこ
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