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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
Monochrome
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ついて、わたしは小走りで駆け出した。
 違う。今のは、わたしの作り出した想像じゃない。
 最前線のこの街に攻略組トッププレイヤーである彼がいることは当たり前のはずなのに、わたしはチラリと見えた薄青いワイシャツを追って走る。何故追いかけているのかも分からないままに、小走りだった脚の動きは全速力に変わっていく。
 そして、街の外へと繋がるゲート前の広場、氷に覆われた雑踏の中に、わたしは彼を見失った。渦巻く雑音の中で、自分の上がった息だけがやけにうるさく耳に障る。
 やがて、目の前にメッセージ受信のアイコンが光った。それと一緒に、今日はこれから中層プレイヤーの狩りの手伝いをする予定だったことを思い出した。わたしはメッセージウインドウを呼び出して端っこのデジタル時計を見た。十分遅刻だ。
 わたしは急いで受け取ったメール――わたしが約束の時間になっても来なかったのを心配してのものだった――に返信すると、マサキ君が消えた方向を一度だけ見て、転移門へ向かった。その途中で浮かんできた彼の後ろ姿はやっぱりどこか寂しそうで、今のわたしによく似ていた。



「はあっ!」

 威勢のいい声と共にシステムアシストを受けた身体が滑らかに動き、右手に握られた片手直剣が四角形を描くように振るわれた。《バーチカル・スクエア》をまともに喰らったハチ型Mobは、甲高い断末魔を上げて爆発する。

「……ふぅ」

 《索敵》スキルで周囲にこれ以上の敵がいないことを確認して、わたしは小さく息を吐いた。腰元の簡素な鞘に剣をしまって、後ろで沸き立つパーティーメンバーに振り返る。どうやら、また誰かのレベルが上がったみたいだ。
 わたしはすっかりと傾いた夕日を仰ぐと、彼らに歩み寄る。

「あ! エミさん、聞いてくださいよ! またレベルが上がったんスよ! 手に入るコルの量も段違いだし、やっぱ“上”は一味違うッスね!」

 すると、それに気付いた一人の少年が、自分の胸元辺り――恐らくステータスウインドウだろう――に向けた瞳を輝かせながら、興奮気味にそう言った。大方、残金か手に入れたアイテムでも見ているのだろう。

 現在わたしたちは、最前線より三つほど下層のフィールドに出てきていた。ほんの三十分前まではここより五層下にいたのだけれど、唐突な「一度でいいからもっと上に出てみたい!」という頼みに流され、ここまで上がってきたのだ。
 このパーティーの平均レベルは、攻略組であるわたしを除けば高くはない。彼らのレベルはいわゆる中層プレイヤーとしては高いが、この層の安全マージンにはまだ4つほどレベルが足りておらず、この層で余裕を持って戦えるとは決して言えない。
 それでも主街区に程近く出現するモンスターも比較的弱いこの辺りなら何とかなるだろうと考えてこの場所で狩りをしてきたの
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