第九十五話 中田の決断その七
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「そうさせてもらうな」
「あの、相手とは」
聡美は中田の今の言葉にだ、表情を変えた。怪訝な顔になりそのうえで彼に対していぶかしむ声で尋ねた。
「相手はお姉様が出してきますが」
「これまではそうだよな」
「はい、ですから」
「指名出来ないのかい?」
中田はその明るさと考えが共にある笑顔で問うのだった。
「相手は」
「それは」
「出来ると思うわ」
智子がその中田に答えた。
「それはね」
「ああ、出来るよな」
「セレネー姉様は力を集めたいから」
「だからか」
「相手を指名しても。戦うのならね」
「あの女神さんはいいんだな」
「ええ、だから」
それ故にとだ、智子は中田に話す。
「それも出来ると思うわ」
「じゃあいいな、じゃああんた達にもそれを言ってな」
「セレネー姉様にもなのね」
「言うさ、そのことをな」
こう言うのだった。
「明日の朝にな」
「私も今の貴方の考えは読めないわ」
「私もです」
智子だけでなく豊香も怪訝な顔で中田に言う。
「誰と闘いたいのか」
「最後の最後に」
「だろうな、ただな」
「ただ?」
「ただといいますと」
「俺は馬鹿だからな」
ここでこう言うのだった。
「馬鹿なことをするぜ」
「馬鹿、いえ貴方は」
違うとだ、豊香は中田のその言葉を否定した。
「決して」
「私もそう思うわ」
「私もです」
智子と聡美も言う、中田は今彼自身が言った様な愚か者ではないということを。
「むしろ頭の回転はいいわ」
「それもかなり」
「いやいや、俺は馬鹿だよ」
まだこう言う中田だった、笑いつつ。
「馬鹿だから馬鹿なことをやるんだよ」
「あの、それは」
「どうしても」
わからないとだ、女神達は皆怪訝な顔で中田に言うのだった。最後に彼が誰と闘いたいのかどうしてもわからないからだ。
しかしだ、中田はまだこう言うのだった。
「それで死ぬかも知れないけれどな」
「あの、倒れられることは」
それだけではとだ、聡美は止める顔で言った。
「絶対に」
「駄目だよな」
「剣士が倒れては」
「倒した剣士にその力が全部いってな」
「その剣士が強くなるだけでなく」
「闘いで出た力がな」
「それは剣士と怪物の闘いの比ではありません」
剣士同士の闘いで出た力はだ、セレネーにしても剣士同士の闘いこそが望ましいものとしている理由である。
「最早」
「闘って喜ぶのはセレネー女神だけか」
「そうです、ですから」
「倒れてその力を出すことはな」
「なりません」
絶対にというのだ。
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