第一物語・後半-日来独立編-
第六十九章 竜神《1》
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ずに、器用に清継は右鎖を片手で操り回転させた。
三回程回転させたところで、つまりそれが彼女がセーランに与えた準備時間であり、終えたのならば行動を再開する。
短く息を吸い、ある言葉を言う。
「縛れ、右鎖!」
それはまさに一瞬。竜神の動きが止まった。
暴れていた竜神が清継が言った言葉の後に、まるで何かに捕まったかのように。
系術なのか加護なのか。
系術にしては発動した感じが無かった。加護も同様だ。ならば、
ありゃあ宝具クラスの能力だな。妖刀に宝具か、品揃えいいな黄森は。
動きが停止したのはあまりにも短い時間だったが、決してセーランは見過しはしなかった。
既に竜神との距離を詰めていたために、流魔線を全力で縮ませれば余裕で接近出来る距離だ。
止まっていた竜神が動き出す。
「早くっ!」
清継が発する。
起こった好機に確実に決める。その考えは黄森の覇王会にも日来の覇王会にもあった。だからセーランは行った。
動き出して暴れる前に、竜神の頭部から数メートルの位置に接近し竜神の身体へと張り付いた。
暴れ始める竜神。
視界が乱れ、張り付いているのがやっとだ。
風が身体を打ち付け、体温と共にセーランをも吹き飛ばそうとする。
繁真と清継は自身の目で、セーランが竜神に接近して身体に張り付いているのを見た。
自分達の役目はここまでだ。後は彼方が、どのように竜神を止めるかによって行動が変わる。
ゆえに二人は安全な距離を置きつつ、竜神と日来の長との決着を見届ける。
どちらにしろ、こちらは自身らの長を守れればそれでいい。そのために日来が動くならば、協力しても構わないと個人的に思う繁真だった。
●
天地がごちゃ混ぜになるような、乱れた視界が平行感覚を失わせる。自分が空を上にしているのか、陸を下にしているのか分からない。
ただ現状、竜神に張り付くように流魔線によって繋いで、暴れる竜神から離れないようにするしかないセーラン。
一度離れたら再び接近するのは困難だ。だからセーランは右腕の憂いの葬爪を竜神の身体に突き立て、肉を裂いた。
神にも痛覚が通っているのか、拍車を掛けたのか更に暴れだした。
頭部近くにいるが、もしかしたら竜口砲|《ドラゴンブレス》が来るかもしれない。可能性は低くなく、けれどもセーランは竜神に突き立てた憂いの葬爪から竜神の、正確には奏鳴の内部流魔を吸収する。
普通の者ならば分からぬ流魔の違いを、今のセーランにははっきりと分かる。
竜神の流魔は熱く、吸収などしなら身体が焼けそうだ。その点奏鳴の流魔は何処か冷たくて、何故か負に似た感情が感じられた。
吸収出来てはいるものの、量から言えばちっとも多くはない。少量過ぎて、これでは暴走を抑えることは出来無い。
流魔を
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