暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
アリシゼーション編
episode2 そしてまた彼の世界へ2
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に立つかもしれないです!」

 真直ぐで、強い意志を讃えた目で、言った。

 「危ないことだって、構いません! いいえ、シドさんだけで危ないことをするほうが、ずっとダメです! 前みたいにみんなでやれば、きっとできますよ!」

 両手に握り拳を作って、ともすれば鼻から気合が噴き出すのが見えるくらいのセリフは、なんというか……どこまでも「スレていない」セリフだった。そのセリフは、俺にはもうない……いやもしかしたら物心ついた頃からもう持っていなかった、そんな明るさを感じさせてくれた。

 世の中には俺や俺達にはどうしようもないものが沢山あって、昏くてドロドロしたものがいろいろと渦を巻いていて、間違ったことが山ほどあって。そんな世界を「くだらないものだ」と思っているような、俺みたいにはもう持ちえない、「世界の正しさ」を本気で信じているような、そんなモモカの真直ぐな心が、俺には眩しかった。

 「……信じてます! シドさんはいい人です! きっとソラさんだって助かります!」

 そんなモモカの力強い励ましは、俺の心の中で反響する。

 その声に、応えたい。
 まだ世界の暗さより、明るさのほうを信じる彼女に、それを示したい。

 だから俺は、笑顔で約束した。
 必ず笑顔で帰ってくると。

 モモカもそれに、満面の笑みでうなずいてくれたのだった。





 「悔しい、っすよ、正直。でも、そういう風になってるなら、しょうがないっす」
 「……一人、ソラを助けにいくなら……シド。異論はない」

 ソラのことをよく知る、長い付き合いの二人は、そう言った。

 今回、ソラの魂を保護、養育している世界である『アンダーワールド』に行くための筐体……ソウルトランスレーターは、一機……それも呼白さんが作った試作の試作機しかないらしい。プロジェクトの大本である、玄路さんの関係者のほうに連絡を取れればもう少し数があるのかもしれないが、現状すぐに用意できるのはその一機だけ、とのことだったのだ。

 必然、彼女の下へと行けるのは、たった一人ということになる。

 「……悪いな」

 二人には、その席を俺に譲ってもらったことにある。

 レミの言うとおり、このメンバーで(ゲーム的なステータスではなく、現実的な側面を見て)突発事態、不測の事態への対応力という点で言えば、自惚れでなく俺が一番だという思いはある。それは二人だってそうだろう。

 だが、そういう問題ではないのだ。

 たとえそれが最善だとわかっていても、それでも個々人の、「思い」は別なのだ。ファーだって、レミだって、自分がソラを助けるために何かをしたいのだ。俺は二人に助けとして、「助けるのを我慢すること」を強いた。それはきっと、俺以上に辛いことのはず。
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