アリシゼーション編
episode2 そしてまた彼の世界へ2
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ことに今の俺のアバターは、「ラッシー」のそれだ。その長い指とアバターの体をを生かして力任せに頭を掻き毟って混乱を誤魔化す。どれだけ掻いても血が出たりしないその体は便利と言えば便利だ。だからといっていくら掻こうといい案が浮かぶわけではないのだが。
「……」
「はぁ……」
ブロッサムがそのまま沈黙する。そして俺は溜め息をつく。
まあ、この際だ。洗いざらい時間の許す限り話すというのもありだろう。
俺が知っていることくらいなら、どうせあの人たちにとっては問題はないのだろうから。
◆
「……まあ、事情を知らないなりに納得はしたよ?」
「うむ。要約すれば古馴染みの友人……失敬、昔の妻に会いに行くので数日空ける、と」
「なんでわざわざ言い直したクソボーズ」
「クソボーズではないグリドースだ。……なんだ、違うのか?」
「別に的確な要約だと思いますよ。それに関してなら別に我々は特に問題ありませんよ。もともと以前はラッシー……シド抜きで『血塗れ雑技団』は回っていたのです。ほかのメンバーも比較的暇ですし、傭兵の申し込みも多いですから」
「うんうん、こっちは心配ないよ? だからシドは、そっちの事を最優先、ね?」
「……悪いな」
ツカサ、グリドース、ミオンは、あっさりとそう割り切った。
この三人は比較的ソラとの関わりが薄かったのが原因かもしれない。そして彼らは良くも悪くも俺より「大人」だった。あいつらは、人にはそれぞれここまで生きてきたことに付随する事情があって、自分たちがそれに対して出来ることなどそう多くないことを知っている。
今に当てはめるなら、それはただ笑顔で送り出すこと、そして。
「別にこれが拙僧たちとの今生の別れというわけではあるまい?」
「少々の不在など、大した問題ではありませんよ」
「うん。オレ達が、待ってるからね?」
俺の帰りを、待っているくらいのこと。
それは傍から見たら大したことではないのかもしれないけれど。
俺にとっては、なによりも嬉しいことだった。
◆
さて、実にオトナな対応をしてくださったGGO……『血塗れ雑技団』の面々に比べて、非常に子供らしい反応をしてくれたのは、モモカだった。ああ、誤解の無いように言っておこう。「子供らしい」というのは、「聞き分けのない」という意味じゃあない。実に若々しく、微笑ましい、ということだ。
「私も行きます!」
真直ぐな目で、モモカは言った。
「私だって、シドさんの仲間なんです! えっと……だから、ソラ、さんだって、私の仲間なんです。シドさんにとって大切な人なら、私にとっても大切な人です。……私が居たって何にも役に立たないかもですけど、でも、何か役
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