アリシゼーション編
episode2 そしてまた彼の世界へ2
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―――今日の夕刻、―――にきてくれ……装置が動かしにくくてね……
呼白さんは、そう言って俺の質問にはほとんど応えることなくさっさと去っていってしまった。好意的に捉えるのなら俺をそのSTLとやらに詰め込むための種々の準備をしに行ったのかもしれない(事実そうなのだろう)し、もし残ってあれこれ説明してくれたとしても、結局俺には半分も分からんのだろうし。
その点。
―――ボクは特に何もないけど、まぁ、居ても意味ないし。長居しても蒼夜が怖いしねぇ
玄路さんはもっと飄々と去って行った。……が、こっちは俺にも分かる。きっと『彼ら』なる人物に俺がこの計画に関わるということを説明しに行ったのだろう。この辺りの面倒事は、それなりに社会人やってる俺は嫌ってほど知っていた。きっとそこには、嘘や口止めといった綺麗事で済まないものもあるのだろう。
たぶん、玄路さんはそんな役を継ぐ人がほしかったのだろう。
この苦労が何となく思い至れる点、俺にもそういう素質はあるのかもしれん。
―――さっさと消えなさい。忙しいのよ、私は。
蒼夜さんはもっと露骨だった。毒舌な人だが、裏表のない分ある意味分かりやすい人なのかもしれない。まあ、攻撃的な分、分かりやすくても「与し易い」とは到底言えないのがあの人の困ったとこなのだろうが。
そして最後の一人。
―――行きなさい。母さんは、信じてるから。母さんよりも、挨拶するべき人がいるでしょう?
朱春母さんは、そう言って俺を笑って送り出してくれた。
◆
(……いるのだろうか?)
母さんよりも……っていうか、そもそも挨拶するべき人なんて……とそこまで考えて、俺は苦笑いしてしまった。一体何回同じ思考を繰り返すのか、という自分に対する嘲笑だ。毎度毎度飽きもせず同じことを、同じように忘れている。
(……いるじゃねえかよ)
そう、いるじゃないか。
ソラと同じように、気兼ねなく『仲間』と呼べる、そんな友人たちを。
◆
「……どこまで、お話しましょう」
「ああ、ぼた……ブロッサムさんはいつも通り、黙っていてくださいよ。……俺が説明しますから」
そういえば数えるほどしか聞いたことのないブロッサムの声が、ひどく弱弱しい。
うーん、こんな時に不謹慎かもしれないが、なんというか無口キャラってずるいな。よっぽどのことがない限り喋らない分、その「よっぽどの時」になった際に吊り橋効果が半端じゃない。弱弱しいブロッサムの声なんて、慣れない分くらっとくる。
「……しかし……」
「どこまで話すか、俺だって悩んでるんですよ……或いは、個別のほうがいいかも、とか……」
ガシガシと頭を掻く。
ありがたい
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