知る者は少なく
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の果てに残る為にはどうしても徐州を捨てなければならないというのに、その事に気付くモノが少なすぎた。
続けて袁紹との戦に参加出来た場合、勝てば報酬として幽州を取り戻せるかもしれない。しかしその先に待つのは……他よりも狭く限られた領地内で孫呉を警戒しながらの、より強大になった曹操との戦。連戦に次ぐ連戦での兵力低下から勝率が限りなく薄い状態で戦う事になり、桃香が大陸を制覇するには逃げざるを得なくなる。
その時、侵略を行う輩に対して二度の敗北を喫した白蓮はもう逃げられない。やっと取り戻した幽州の地に、今度こそ命を捧げようとするだろう。
万が一、桃香と逃げたとしても……この世界の乱世、その早回し具合を鑑みると益州を平定している時間が足りない為に、孫呉と結んでも力が大きくなり過ぎる曹操を打倒するには足りず、敗北すれば生き残ったとしても幽州は与えられた形でしか戻ってこない。単純な計算でこれなのだ。沢山の事柄が複雑に絡み合うのだからもっと酷くなるのは必然。どっしりと自分の地を構え続ける事が出来ない劉備軍では事態が良くなる事は無い。他の勢力にしても我関せず、劉備軍を当て馬程度にしか見ないだろう。
そして秋斗の最も思い悩んでいる所は……袁術軍を跳ね返した後直ぐに益州の乗っ取りを開始する場合。先程の言の通りならば天下三分、もしくは二分で終わってしまう事となる。桃香の言っている事はそういうモノ。秋斗からすれば幽州はある意味最も最悪な形で取り戻す事になる……さらには桃香の目指す『未来』であっても秋斗の目指す『世界』では無い。
秋斗は天下三分や二分で乱世を終わらせる事を絶対に認められない。未来の世界を知っている為に。大陸がどうなるか知っているが為に。
顔が見えていないのが幸いであった。楽しそうに話す白蓮は秋斗がどれほど絶望に堕ちているか分からなかったのだから。
彼は言えない。先程彼女の事を傷つけてしまった故に。
侵略を嫌う彼女に、自分達が侵略する側になる、なんて事は言えやしなかった。
桃香の言っている事に大きな矛盾が生じている、なんて事も言えやしなかった。
傷ついてやっと立ち直った彼女に……非情な現実を叩きつける事は出来なかった。
話すとしてもまだ時期尚早。だから秋斗は全ての言葉を呑み込む。
「秋斗もそんな世界を目指して戦ってきたんだろ?」
されども友からの刃は鋭く、彼の心を容易く引き裂いて、追い詰めて行く。
白々しく、自分は桃香の描く『未来』の為に戦っているのだと嘘を付けばいい。しかしそれだけはしてはならない。彼が、彼である為に。彼がずっと繋いで来た幾つもの想いに応える為に。約束した先の世の平穏を作り出す為に。
「……クク、そうだなぁ。そんな世界になれば……乱世を終わらせられるだろうなぁ」
だから逃げた。誤魔
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