知る者は少なく
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思い出して、自身の正直な感想を伝える事にした。
「いや、心持ちの例えとして持ち出しただけだから実際はかなり似合うぞ? お前は美人だし可愛いし」
「なっ……お、お前なぁ、そういう言葉は簡単に使うな、バカ!」
耳元で大きな声を出され、耳鳴りが響いて少し顔を顰める秋斗であったが、照れ屋な事も知っている為に可愛らしく思えて苦笑した。
「本当の事なんだから別にいいだろ?」
女を褒める事がなんでもない事だと示されて、白蓮の心に少しもやが掛かった。
――そんなだから苦労してる女がいるって気付いてやれよ、バカ秋斗。
彼の事を慕う者達を思い出して頭に浮かぶのは牡丹や星、雛里の事。
そこで白蓮は牡丹が伝え損ねた想いをどうすればいいのかと迷い始める。自分が代わりに伝えてもいいのか、少しでも牡丹の為になるのではないかと。
――いや、牡丹が伝えてこそだろう。誰かが代わりに伝えても、それは牡丹の想いに唾する事になるし、秋斗の心に影を落とすだけだ。
白蓮なりに考えての判断。自分と星が知っているだけでいい、牡丹の想いは牡丹だけのモノ。そこに異物が混ざる事などあってはならないのだと。
事実、伝えなくて正解であった。秋斗の心は死者の想いに引き摺られやすく、さらには雛里との事が心に圧しかかっている今では自身の幸せの全てを諦めてしまうが故に。もしくは、さらなる重圧で壊れてしまう故に。
――厳しくて優しい、鋭くて鈍感、真っ直ぐで捻くれてる、頭がいいけどバカ……そんな秋斗の事を牡丹や星は好きになったんだなぁ。
初めてと言っていいほどに秋斗の事をじっくりと考えはじめた白蓮は、次第に自分はどう思っているのかと思考を回していく。
慕っているかと自分に問えば……星や牡丹を見てきた白蓮には自分が同じであるとは思えなかった。
では逆に慕っていないかと問えば……どうとも言えない感情のもやもやが湧いて出てくる。
自身の感情を理解出来なくて思い悩む白蓮は、悩むうちに少し思考がずれ始め、恋愛というモノをすっ飛ばして考え始めてしまった。
――子を為したいかどうか。そうだな、秋斗の子なら優秀になるだろうから欲しいな。
恋とは最終的にそこに行き着くのだと、王としての立場も混ぜ始めたのだった。恋愛経験の少なさ故、そして王としての成長もあったが故、乙女の心が育っていない故に。
ただ、その過程を、どのようにして子が作られるかを遅れて思い出して、みるみるうちに白蓮は顔を真っ赤に染め上げた。
そんなどこかずれた思考をしている白蓮を抱きしめながら、秋斗は別の事を考えていた。
幽州を如何にして早く手に入れるか。傷つけてしまった白蓮に対して返す事が出来るのはそれくらいだろうと判断して。
しかし早い内に幽州を取り戻そうとする
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