決戦6
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わったか。
だが、望みがあるとすれば。
……私もともに戦いたかった。
小さく呟いた意識は、一筋の閃光によってかき消された。
+ + +
敵の射程外に達して、ラインハルトは汗に濡れた顔で振り返った。
吐き出す息は荒く白い。
息を息を吐きだしながらみれば、降りてきた敵の指揮官が見える。
小さいながらもはっきりとわかる。
自らと同じ金色の髪をした男だ。
「ラインハルト様」
かかった声に、ラインハルトは振り返った。
キルヒアイスだ。
その後方からは息も絶え絶えに、マーテル中佐の姿もあった。
「ミューゼル少尉。大佐はいかがした」
その問いにラインハルトは視線で、同盟軍を示す。
小さく息を飲む声が聞こえた。
「御無事でよかった」
「ああ」
返事をしてから、しばらくの間があった。
あちらもこちらをじっと見ている。
「戦いますか」
「……勝てるか」
「……」
ラインハルトの問いに、答えるのは沈黙だ。
やがて、頷きかけたキルヒアイスをラインハルトは言葉で止めた。
「戻ろう。命をビットするには、あまりにもわりにあわない」
「しかし」
「わかっている。あの指揮官――名前を調べられるか」
「ええ。すぐに」
いまだ呆然と立ち尽くすマーテル中佐の隣を歩き、ラインハルトは視線を落とす。
カプチェランカでの戦いは、ラインハルトにとってはまったくの無駄で、意味のない戦闘のはずだった。
しかし、まだまだ学ぶことは多い。
自分達以外は阿呆ばかりと思っていたが、存外敵も味方もそうではないようだ。
なればこそ、味方が必要だ。
強く思い、ラインハルトは雪を踏む足に力を込めた。
足踏みをしている時間はない。
+ + +
「良いのですか」
「これ以上、深入りをして犠牲を出す必要はないさ。無傷で敵指揮官を撃ちとれた。それで十分じゃないか?」
「にしては、戦果に満足されていないようですが」
「今回が最大のチャンスではあったからね」
部下もいない単身の状況下で、おそらくこの先にはこれ以上のチャンスはない。
予想外だったのはヘルダーの特攻。
もしヘルダーに狙いを切り替えなければ、捨て身となったヘルダーによってこちらも被害がでた。だから、そうせざるを得なかった。
あるいは、もう少し時間を置いてからの方が良かったか。
いや、そうすればキルヒアイスが戻っていた。
彼の腕を勘案すれば、下手をすればこちらの味方にも被害があっただろう。
他部隊を誘うべきだったか。
そうなれば、戦闘にすら間に合わなかっただろう。
敵指揮官を発見したとの無線連絡をしてから、いまだに援軍が到着しない事がその証左。
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