決戦6
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第一戦にいた頃ならば、この程度で疲労など覚えなかっただろう。
後方任務と思い、身体を鍛えなかったことが悔やまれる。
だが。
ヘルダーは表情に笑みを浮かべて、同盟軍を見る。
戦場を走りきることはできずとも、一矢報いことは可能。
見れば、先頭に立つ指揮官も若い。
ラインハルトほどではないにしろ、ヘルダーにとっては子供と同じような年齢だ。
それを可哀そうなどとは思わない。
戦場に立てば存在するのは味方と敵。例え撃ちとられようが、無駄にはしない。
「ぉぉ!」
叫んだままに引き金を引いた。
放たれた弾丸からブラスターが放たれ、敵指揮官の近くで雪をまき散らした。
敵が銃撃を止めて、慌てたように周囲が指揮官を庇うように走る。
だが、それを手で制止し、二つの双眸が冷静にこちらと、続いて岩陰に残したラインハルトを見ていた。
少しは焦ればやりやすくなるがな。
襲い来る敵に怯むことなく、周囲にも視線を走らせる姿にヘルダーは小さく舌打ちをした。しかし、それでも他の手は止まった。
チャンスとばかりにさらに接近するヘルダーに、指揮官が小さく息を吐いた。
一瞬の逡巡。
すぐに下された命令は、即座の反撃だ。
僅かでも迷えば、その首をかき切ってやったのに。
苦虫を噛み潰したヘルダーを狙うブラスターに志向性が生じた。
それまでただ闇雲に撃っていたブラスターが、進行方向を予測するように前方へと集中。
必然的にヘルダーは進路を変えるが、それは今までの回避ではなく、誘導された逃亡だ。
岩場へと追い込まれていると知りながらも、逃れる事ができない。
追い詰められながら、ヘルダーは小さく笑む。
こちらを狙い始めたということは。
ブラスターの弾倉を交換しながら、ヘルダーは視線を横に向ける。
ヘルダーにブラスターが集中すると同時、走り抜けるラインハルトの姿があった。
良い判断力だ。
こちらを振り返れば、敵はその瞬間を狙い撃つ。
あるいはそれが敵の狙いであったのかもしれないが。
あとはこちらが時間を稼ぐだけ。
右へ左へと動きながら、小さな岩場へを走り抜ける。
やがて足が限界を迎えた。
自らの意思に反して折れる足。
動きの止まったヘルダーをブラスターの閃光が捉えた。
「かっ……」
小さく血を吐いた。
そこに、押し寄せるは幾筋の光。
胸を、足を、腕を――閃光によって貫かれながら、倒れていく。
視界が若い指揮官と、そして。
倒れながら見たのは、ヘルダーを囮として駆け抜けるラインハルトの姿だ。
まったく。
ヘルダーは思う。
「年は取りたくないものだ」
優秀すぎる味方に、優秀すぎる敵。
老骨の時代は終
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