決戦6
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決意。
そうとしかとれぬ瞳が、ラインハルトを見ている。
「先ほど私は何とかしてみろと、言ったが。何とか出来る方法がある」
「……何を?」
「思いつかぬか」
嘲笑すらも浮かべた表情に、ラインハルトはしばらく待って頷いた。
有利な地点からの一斉射撃。
それはラインハルトを殺すだけではない。
集まった味方すらも一蹴する悪魔の罠だ。
それを回避する策は、いかなるラインハルトも思いつけないでいる。
覚悟を決めて、走るか。
分の悪い賭けであるが、座して死を待つ趣味はラインハルトにはなかった。
「そうだろうな。ミューゼル少尉は、一族郎党が処刑といった。だが、それ以外にも助かる方法はあるのだ」
「……」
「聡明な君のことだ。その策はわかったようだ」
「本気か?」
「冗談ならば、私も嬉しいがな」
憮然としたラインハルトに、笑い声が響いた。
楽しげな、面白げな声だ。
「最後に君のそんな顔を見れて、嬉しい」
「本気で言っているのか」
「だから貴様は若造というのだ」
ラインハルトの言葉を撃ち消すように、強い言葉が響いた。
彼を睨むように、そして、嘲笑うようにヘルダーは見ている。
「お前が姉を、キルヒアイスを大切にするように、我々にも大切にすべきものがある。それは命を賭けてもだ」
叫ぶように放たれた言葉に、ラインハルトは反論ができない。
お前らと一緒にするな。
そう浮かんだ言葉は、ヘルダーの瞳にかき消された。
「私が死ねば、家族が助かる。ならば、私は命なぞ幾らでも手放そう。暗殺を行う前に、無様に戦死した――そう聞けば、いかに雌狐も私の家族に手は出さぬだろう」
「……貴殿は。ヘルダー大佐はそれで良いのか」
「初めて階級を呼んだな」
微笑。
そして、小さな笑みを浮かべながら、ヘルダーはラインハルトを見る。
「賭けは引き分けだな」
「何を?」
「そうだろう? 結局、貴様は私を何とかすることはできなかった。だが」
言葉と共に、ヘルダーは懐に手を入れて、放つ。
それは一枚の紙切れ。
「雌狐の手紙だ。何の証拠にもならないがな」
苦笑。
「もしヴァルハラに来ると言うのであれば、その時は賭けに勝ったと。そう言ってから来ると良い。何もなければ、そのまま現世に突き落とす」
+ + +
「おおおおおおっ!」
叫んだ声は咆哮。
力強く呟いた声は、まるでレーザーすら避けるようだ。
集中されたレーザーは動き出したヘルダーを狙い、しかし捉える事ができない。
雪原を獣のように駆け抜けて、ブラスターを放った。
突然の攻勢に、同盟軍が驚いたようにたじろいだ。
動揺している。
ならばと、ふらつく足に更に力を込めた。
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