As 10 「パートナー」
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友人は……どれだけ精神年齢が高かったんだろうか。
「話を続けますが……彼女は私が歩き疲れたら手を引いてくれましたし、転んだ時は背負ってくれました。今思えば、家から子供の足で歩いて行ける距離の野原や裏山でしたが……彼女と出歩いた世界は、私にとって初めての経験ばかりで何もかも新鮮でした」
本当に楽しかったのだと分かるほど、シュテルは笑顔を浮かべている。きっと彼女にとってその友人は、俺にとってのはやてのような存在なのだろう。
今よりも小さい時期に子供が子供を背負っていたという話に違和感を覚えなくもないが……魔法世界とここを比べてはいけないよな。
いつになく言葉数の多いシュテルだったが、ふと我に返ったかのように笑みが消えて無表情に戻った。彼女は一度咳払いをしてから再び話し始める。
「……見知らぬ人間が出てくる思い出話をされても面白くないでしょうから、結論だけ言いましょう。友の大切さは私も理解しているということです」
「そうか……でも」
そうだとしても俺がやっていたことは立場上許されることじゃない、と続けようとしたのだが、シュテルの大きなため息で遮られてしまった。
「やれやれ……あなたは基本的に鋭いですが、こういうところは鈍いですね」
「……?」
「友が大切と言っているのですから、間違ったことをしているのならば正すことが優しさなのだということも理解しています。あなたの考えていそうなことが一般的に正しいのでしょう……ですが」
立ち上がってこちらに近づいてくるシュテル。パッと見た感じはいつもの感情のない表情だが、纏っている雰囲気のせいか真剣に感じる。
「ショウ……あなたは私にとって大切な人なのです」
はっきりと言われたその言葉に、思わず顔が熱くなった。ニュアンスとしてははやての言う《好き》と同じなのだろうが、シュテルははやてと性格が違う。そのせいか今感じる恥ずかしさは、はやての比ではない。
「事件が始まってから今日のような日が訪れるのではないか、と予想はしていました。ですが、それでも倒れているあなたを見たとき、私は激情に身を任せてしまいそうになりました。これはあなたに一般の方とは違う強い想いがある証拠だと思うのです」
い、いや思うのですと言われても……。
堂々と言ってくるシュテルに対し俺は徐々に恥ずかしさを増して行っている。そのため返事を返そうと思っても、上手く話すことができない。ある意味いじめではないかと思うほど、そんな俺を無視して彼女は話し続ける。
「レーネがなぜ私をこの職務に就けたのか分かる気がします。技術者として仕事を始めてからというもの、私は再びのめり込んでしまって昔の私のようになりつつありました。ですがこの職務に就いてからは、自分らしさのある部屋を作る楽しさ。何気ない
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