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鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―
参_冷徹上司
七話
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 「・・・・・・おや?」

やはりいない。やけに庭が静かになったと思ったが、報告もなしに命じた仕事を放り出すとは。
鬼灯は眉間に皺を寄せる。
しかしまあ、勝手にいなくなったとはいえ閻魔庁の敷地内からは出ていないだろう。
たった一人で、右も左もわからないこの地獄をウロウロできるような人間には思えない。
鬼灯はキチンと揃えて置かれている水やり道具に目をやった。そして金魚草を見る。
金魚草たちは元気にピチピチと体を震わせている。
どうやら、やるべきことは終わらせたようだ。

「一体どこへ・・・・・・」

「ぎゃあああ!!」

女性の悲鳴。鬼灯にはすぐにわかった。ミヤコの声だ。
閻魔庁をぐるりと回った反対側の方から聞こえる。
鬼灯は冷静にそちらへ向かった。

「何をしてるというんです」

そこは、かつて葛飾北斎の絵があった壁がある裏庭だった。
唐瓜と茄子もいる。

「ほ、鬼灯様!」

「さっきからぎゃあぎゃあと。やかましい。何をそんなに叫ぶことが」

「いやー、あのほら、この気味の悪い動く絵のせいで」

見ると、アイアンアマテラスの顔が不気味にうごめいている。
なるほど。これは初めて見る者が驚くのも仕方がない。
ミヤコは壁からずいぶん離れたところで、壁を凝視していた。

「な、何なんですかこれ!」

「これは少々、特殊な岩絵の具で描かれたものなので、動くんですよ。今や『地獄版真実の口』として、巷ではプチ有名スポットです」

「ほんまに食いちぎろうとしてくる真実の口なんて、怖すぎるわ!」

「それよりあなた」

鬼灯がジワリと切り出す。
ミヤコはそこれギクッとした。勝手に水やりの仕事を切り上げて、ここに来てしまったことを思い出した。

「社会人たるもの、報告、連絡、相談は基本中の基本!まあ、わたしが言った仕事はちゃんと終えていたのでそこはよしとしておきますが」

「す、すみません」

頭を下げるミヤコ。もし自分が閻魔大王だったら、確実に金棒の一撃がお見舞いされていただろう。
いや、しかし今の自分の立場もそこそこ危ういかも知れない。

「・・・・・・ミヤコさん、絵がお好きなんですか?」

鬼灯が手直しされている壁の絵を見て言った。

「はい。現世で絵の勉強をしていたので」

「なかなかお上手ですねえ」

「俺の絵もすっごくよくなったよ、ミヤコお姉さんが手伝ってくれたから」

「ええ。芸術は爆発だと有名な言葉がありますが、さらに大爆発した感じですね」

「そういえば岡本太郎もどっかにおるんかなあ」



その後、鬼灯はミヤコに金棒の一撃を食らわすことはなかった。
ミヤコは夕方頃まで壁の補修の続きをし、いいところで切り上げると鬼灯に社員
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