7:霧払いの令嬢
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驚愕の面持ちのリズベットがハーラインへと詰め寄る。
「ハーライン! どういうことなの!?」
「ようやく名前で呼んでくれたね、嬉しいよ。リズベット君」
「そんなことはどうでもいいの! どうしてあんたなんかがミストユニコーンの武器を持ってんのよ!?」
「いや、なんてことはない話だよ。闇市場の競りで偶然見かけたこの素材に一目惚れしてね。私の店の収益の殆どを犠牲に競り勝ち、手に入れただけのことだがね。そして、私自らの手で鍛え上げた矛槍なのだよ、この子……ミスティアは。もっとも、より正確には矛槍というよりも《パルチザン》と呼んだほうが分類上は正しいのだがね」
己の武器を我が子の様に呼ぶ持ち主は、子を愛でるかのように細心の注意で刃を撫でながら、どこか芝居めいた独演を続ける。
「蹄を炉で熱する事で、インゴットと同じように武器へと鍛造が可能でね。この美しく仕上げた刃に負けぬように、柄には大理石、端部には金や宝石を使ったのだが……引き立て役にしては少々心許なくてね。更に私の渾身の彫刻装飾を施したのだよ。……だが、それでもまだこれは未完成だ。だから私は完成を目指すべく、ずっとユニコーンを捜し求め続けてきた。故に、此度の狩りにも参加したわけなのだよ」
「それだけ作り込んでおいて、まだ何か足りないのか?」
「いかにも」
俺が問いかけると彼は大きく頷き、大仰な仕草で片淵眼鏡を掛け直した。
「私が手に入れる事が出来た素材は、ユニコーンの蹄だけなのだよ。最後の仕上げの為に、もう一つの素材がいるんだ。そう……この刃の根元、鍔の部分に《ミストユニコーンの鬣》で出来たファーを着飾って初めて、完成したと言えるだろう」
「二つの素材が揃って初めて完成って点はある意味、間違ってないかもね」
ハーラインの独演にうんざりした風に、リズベットが半ば強引に割って入った。
「何か特殊効果があるみたいだけど、使用不可能になってる。多分、もう一つの素材も揃えれば解明するんだろうけどね。でも、今のままでも充分に強力な武器には違いないわ。攻撃力はかなり高いし、薙ぎ払うアクションでのダメージボーナスまで付いてる」
「フフフン、そうだろうそうだろう?」
鼻を高くしてハーラインが頷いている。
「でも、耐久値は元々低めな素材だったようね。しかも、どっかのバカの過多な装飾なせいで、さらに武器自体の最大耐久値が下がってる。これじゃ、激しい戦いの度にすぐメンテナンスが要るし、ヘタしたら戦闘中にボッキリ折れる危険すらある。ハッキリ言って観賞用がいいトコ、脆すぎて実用性は低いわ。こんなの、ユニコーンや素材達が可哀想よ」
「デリケート、と言ってくれたまえよ。あたかも、たおやかな乙女のようだろ
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