7:霧払いの令嬢
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嗚呼……八百万の神々よ、私に生まれついての美しい容姿を与え給うただけでなく、このような幸運まで恵んで下さるというのか……なんという有難き幸せ……」
言葉の後半では空に向かって跪き始めていたハーラインに、女性陣が揃って一歩引いていた。
「テメェらにはオレの情報を握られたからな。ユニコーン争奪戦じゃ厄介な相手になりそうだと思ってたが……こいつァ願っても無ェ。死神の事はともかくとしても、これだけの戦力のあるパーティに入れりゃ、もうユニコーンは俺達のモンになったも同然だな。なんてったって、KoB副団長《閃光》のアスナに加えて――あの《黒の剣士》のキリトまで居やがるんだからな」
デイドが俺をピタリと見据えて言った。
「…………あれ? なんか正体バレてるよ、キリト君」
アスナがヒソヒソと話しかけてくる。
「……おかしいな、俺はまだ三人には自己紹介していなかったはずだけど……」
ここでハーラインが苦笑しながら割り込んできた。
「黒の剣士って……いやいや、まさか……デイド君、人違いじゃないかね?」
「いーや、モノホンに違いねぇ」
デイドは断固とした口調で言う。だが、反してハーラインは納得していない様子だ。
「確かにそこの彼は黒尽くめで、この階層に居られるだけのレベルはありそうだがね、失礼を承知で言わせて貰うが……噂に違わぬほどの大した人物にはとても見えないよ。私は、彼は黒の剣士に扮した模倣プレイヤーだと、てっきりそう思っていたのだが……」
デイドはハーラインの言葉に軽く笑い、指を立ててチッチッチと振った。
「分かってねーな。そりゃ、コスプレする偽者野郎もいるだろーが……コイツがパチモンじゃねーと分かる挙動は幾つもあった。かのトッププレイヤーの《閃光》と平然と肩を並べ連れ歩く風格に、街のド真ン中で叫ぶクソ度胸。何度も率先してオレらのいざこざの仲介をこなす器量に、目の前にオレの槍を突きつけられて眉一つ動かさねぇ肝っ玉の太さ。コイツが本物じゃなけりゃ何だってんだ」
「ほほう」
俺は思わず口笛を吹いた。
「そんなところまで見られていたのか。勉強になったよ」
「えぇー……そこって感心するところなのかなー……」
アスナが乾いた呆れ声を漏らし、それが真実だと受け取ったハーラインは心底驚いた風に息を詰まらせた。
「それじゃあ、本当に君が……」
「隠すつもりは毛頭無かったんだけどな。さっき自己紹介を割いてしまったから、言うのが遅れた。……キリトだ、よろしく」
なんだか妙に居た堪れなくなったが、頭を掻きながらあえて二つ名を言わずに自己紹介を済ませた。
「……いやはや、驚いたよ。アスナ君だけでなく、さらにあの黒の剣士まで相見えることになる
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