7:霧払いの令嬢
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蛇足な質問ではあるが、念の為、聞いておくに越したことはないだろう。
問われたハーラインは顎に手を当て、感慨深そうな顔をして答えだした。
「ああ……駆け出しの頃、当時は他の鍛冶職人に追いつくので精一杯でね。ただ単に真似して鈍器を手に材料を集め回っていたよ。懐かしいね……。でも、しばらくして少し余裕が出来始めた頃、前々から鈍器は美しくないと思っていたからね。早々に両手棍に乗り換えたのだよ。鈍器で殴るのって、粗暴で品の無いイメージしか沸かないじゃないか。それにホラ、両手棍はシンメトリーなデザインの物が殆どだろう? 当時はあれらの造形が美しいと思い始めててね」
「あああ……今すぐ、この浮気性なバカの頭に、あたしのメイスをブチ込みたいわ……!」
「リズ、さっきからなんか怖いよー……落ち着こうよ。ね?」
美しくないと言われた鈍器の戦槌を両手に力一杯握り締めたリズは、今にも彼の頭蓋骨に叩き付けんと頬をヒクつかせていた。そんな事に一切気付いていないハーラインは悠々と言葉を続ける。
「だが、スタッフは扱いが難しいね。少なくとも、残念ながら私には向いていなかったよ。かなり練習したつもりだったが、頭に思い浮かべるアクションが一向にできなくてね。そして、まだ扱いやすい槍に落ち着いて今に至るという訳だよ」
「……なるほどね」
それなりの事情があるとは思ったが、ここまで分かりやすいのも珍しい。
己の好き嫌いにのみ頼るが故に、それぞれの武器の特性を飲み込もうとせず右往左往してしまい、結果的に損をする典型的な一例だ。
「さて、私の話はもういいだろう。……そんな事より、私は残る最後の一人の話が気になるな。そこの……未だ謎だらけの人物のね」
ハーラインは青のマントをはためかせ、チラリと横へ視線を滑らせた。
そこには微動だにせず立っている、名すら明かされていない第三の容疑者。
「ああ、そうだな。――そこのあんた、何度も申し訳ないが、次こそは情報を見せてもらえると嬉しいのだが……」
「……………」
首を僅かに左右に振る、もう見慣れてしまった三度目の拒否動作。
分かりきってはいたが……結局、全ての要望を断られてしまった。
「おい、テメェ……」
と、デイドが麻のフードに進み寄り、何を思ったか、胸倉を荒く掴んだ。
「さっきからテメェは何なんだ!? オレらは疑いを晴らすべく情報を開示してるってのに、テメェはアイテムも武器もスキルも見せませんだぁ? ふざけてんじゃねぇ!」
「……………」
乱暴に掴まれ矮躯が揺れるも、そのつぐんだ口の方は揺るぎが無い。それを見たデイドは、苛立たしげに歯を剥き出しに食いしばる。
「このっ……その胸クソ悪ィフー
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