第二話 目覚める炎その十四
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「凄い匂いがして汚くなりやすいから」
「そうなるよな、やっぱり」
「部活でもね」
「うちの拳法部とかモトクロス部は綺麗だったぜ」
「お掃除がしっかりしてるからよ、けれどね」
「いい加減な部はか」
「凄くなるから」
「匂いもなあ」
「よくさ、覗きってあるじゃない」
裕香はここでは眉を顰めさせた、それは覗き行為に対する嫌悪と軽蔑だけではない。
「あんなことしてもね」
「匂いでか」
「普通は幻滅するから」
「そんなにきついんだな、女の子の匂いって」
「男の子よりもね、多分」
「ううん、じゃあ女子寮はか」
「女の子の体臭に汚物の臭いにシャンプーや石鹸の香り、香水って」
後の方はどれもそれだけならいい、だがだった。
「そういうのが全部混ざり合って」
「うわ、怖いな」
「慣れてない人なら入っただけでね」
まさにだ、その匂いでだというのだ。
「卒倒しかねないわよ」
「女子寮は魔窟かよ」
「少しでも油断したらそうなるから」
「つくづく怖い場所だな」
「そこ、わかっててね」
釘を刺す顔で言う裕香だった、薊に対して。
「だからお掃除はね」
「絶対に忘れたらいけないんだな」
「女子寮にいるとね」
そうした話をしつつ帰路についていた、そしてその二人の前にだった。
不意に人影が出て来た、その人影は。
一見しただけで尋常なものではなかった、シルエットこそ人に近いが。
頭が違っていた、妙に突き出たものが二つある。そして。
暗がりに慣れてきた二人の目にだ、さらに異様なものが見えた。
肌は緑だ、しかも。
人間の肌ではない、その質は。
「虫?」
「だよな、完全に」
肌だけではない、顔もだ。
目は異様に大きい複眼が頭の左右にある、そして口は禍々しく左右になっている。そしてそこから不気味に蠢くものが見えている。
手も人間の手ではない、それは。
「鎌・・・・・・ね」
「カマキリだよな」
薊は裕香の言葉に眉を顰めさせて言った。
「あれは」
「何であんなのが?」
「なあ、あいつな」
薊は眉を顰めさせたまま自分の横にいる裕香に言う。
「どう思う?」
「人間じゃないって?」
「どう見てもそうだよな」
「ええ、本当に」
「それにな」
量での鎌を構えている、それも見てだった。
薊は七節棍を出した、そうして裕香の前に来て言った。
「裕香ちゃん戦えないよな」
「戦うって?」
「格闘技とか知らないよな」
「私ソフトボール部だから」
「だよな、それじゃあな」
それならと言ってだ、両手に持っている七節棍を構えていた。そうしてこう言うのだった。
「危なくなったら逃げろよ」
「逃げろって」
「ああ、逃げろよ」
裕香にだ、自分の身を湯煎させろというのだ。
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