しずくちゃんの誕生日
4月15日、南しずくの誕生日。
この日、友人である園田 優の自宅でしずくちゃん誕生日パーティーが催された。
高校に入学したての頃には想像もできなかった光景。
しずくは嬉しさと照れ隠しのためにケーキを頬張り続けた。
パーティーが終わり、しずくは野田コトネと同じ方向に帰っていく。
コトネはしずくの親戚で、彼女の家に居候中だからだ。
「しずくちゃん、あんなに大勢に祝ってもらえてよかったね」
「うん。ケーキもおいしかった」
「もう、嬉しくて泣きそうだったくせに〜」
「うるさい」
一見すると仲の良い友人だが、2人にはある秘密がある。
「それにコトネからはまだプレゼント貰ってない」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ。まあ、みんなの前でされても困るけど」
「え〜?みんなの前にされると困るプレゼントってなにかな〜?」
コトネは全て分かった上でとぼける。しずくが困ったり、怒ったりする表情が好きだからだ。
「それは……キ、キス」
「へぇ、しずくちゃんは誕生日プレゼントにキスしてほしいんだ」
こくんと頷くしずくを見て、コトネも胸の高鳴りを感じていた。しかし、ここで素直にコトネからキスをしてはおもしろくない。
「しずくちゃんってさ、私より少しお姉さんになったんだよね?お姉様にキスの仕方を教えてもらいたいな」
「え……だって、キスはいつもコトネから……」
「うふふ、お姉さんになった記念日くらい、しずくちゃんにリードしてもらいたいな」
顔を真っ赤にしたしずくは少し考えた後、無言のまま背伸びをしてコトネに顔を近づけた。そして、コトネは目をつむり、しずくを受け入れる態勢が整った。
「コトネ……するね」
これまでにキスは何度も経験しているのに、する側とされる側が逆になっただけで何倍もドキドキしている。ほんの一瞬だが、2人にとっては大切な一瞬。唇と唇が触れ合うだけでお互いの気持ちが全て行き来したように感じた。
「コトネ、キスのやり方は分かった?」
「うん」
「じゃあ、今度はコトネから……して」
2人がキスをする特別な関係になってから1年。この関係には乗り越えなければならない壁がいくつもあるけど、今夜はひとまず「好き」という気持ちを唇を通して伝え合う。
4月15日、自分からキスができる南しずくが誕生した日。
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