秋山 駿
第一章 崩壊する生活
第一話 不幸の報せ
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放り出してでも駆け寄ってきた花ちゃんによって阻止されてしまう。
「わーっ!!ダメダメ!!ダメです社長!」
「なんで!?新聞くらい読んでいいじゃない。別に散らかす物でもないし」
「読むなら、えっと……夕刊とか如何です?」
「花ちゃん、まだお昼だよ。夕刊の時間にしては早いし、そんなに慌ててどうしたんだい?」
花ちゃんは新聞紙を握りしめたまま動かなくなってしまった。
よっぽど見せたくない内容なのだろうか。
神室町では頻繁に事件が起きる為、新聞の一面にそういった事件が飾るのは最早日常茶飯事だ。
ましてやこの街では、東日本最大の極道組織・東城会が幅を利かせている。
見たくもない、聞きたくもない事件なんて、街中に転がっているのだ。
煙草を咥え、空いた手を花ちゃんに差し出す。
「見せて」
いつもとは違った雰囲気の秋山を花ちゃんはしばらく見つめ、根気負けしたのか仕方なく新聞を渡した。
握りしめられ潰れた新聞を広げ、最前を飾る一面に目を落とす。
そこに描かれた写真と文字に、思わず咥えていた煙草が落下する。
膝を跳ね地面に落下した煙草が転がり、それが止まる頃に秋山は声にならない言葉を漏らした。
「桐生一馬、死亡……?」
一面には暴力団組員の抗争について大きく書かれており、その下の方に書かれていたのは桐生一馬という男の名だった。
間違いない、彼は秋山にとって運命を変えてくれた男。
神室町を守るため共に戦った、戦友とも言える男の名前だった。
半年前、短期間だが大阪に居た秋山が夢を叶えたい少女と出会い、その果ての近江との抗争で2人は共に戦った。
今目の前に映る光景は、夢じゃないのだろうかと何度も顔を殴ったりして確かめてみた。
でも夢じゃない、これは現実。
花ちゃんは、見せるべきではなかったと気まずそうに見つめている。
それに気付いたのか慌てて新聞を置き、煙草を拾い上げると殆ど吸ってないそれを灰皿に押し付けた。
溜息にも似た深い息を吐いた秋山は、花ちゃんみ声をかける。
「花ちゃん」
「は、はい」
「遥ちゃんを……澤村遥の今ついて調べてくれないか?」
「えっ?」
その名は、東城会元4代目だった伝説の極道と呼ばれる桐生一馬の連れ子の名だった。
夢を叶える為に大阪で奮闘する彼女と出会い、その夢の為に桐生と共に戦ったあの日。
今でも鮮明に思い出せるあの頃の出来事だが、それを忘れられない理由はもうひとつあった。
「遥ちゃんは、アイドルを辞めるという宣言をしたあの夜から、連絡が取れないんだ」
「そ、それって」
「あぁ。彼女は今、行方不明だ」
半年前に終わった非日常が、再びにじり寄ってくる感覚に襲わ
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