二十八 帰還
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気づかれず。
そんな事が出来るただ一人の少年から、ザクは義手を引っ手繰った。
「またお前か…ッ!!」
月明かりに照らされた彼の顔を、ザクは忌々しげに見上げる。彼とは対照的に、ナルトは静かに微笑んでみせた。
「なぜ俺を助けた?」
「偶然だよ」
我愛羅がいる屋根とは遠く離れた地点。安全地帯であるそこから、ナルトは空を仰いだ。
月はまだ、完全に満ちてはいない。
「君は運が良い。今夜が満月だったら、」
「てめえは一体、何がしてえ!?」
ナルトの言葉を断ち切って、ザクは声を荒げた。
「邪魔すんじゃねえ!お前さえいなけりゃ…」
「死んでただろうね」
あっさりと結論を下す。ぐっと言葉を詰まらせるザクをナルトは静かに見遣った。
事実、偶然だった。約束の十日目。ナルトは君麻呂と香燐を伴い、時空間移動を行った。
目的地の座標は中忍第二試験時に香燐を助けた木。大ムカデを幹に縫い付けた、あのクナイである。
術式を施しておいたそのクナイに飛ぶ。ジャングルの奥地から木ノ葉の里『死の森』へ。
行きは二日かかったが、帰りは一瞬。もっとも飛んだ先は干乾びたムカデの死体があるので快適とは言えなかったが。
だが里に着いて早々、なにやら不穏な空気を感じる。その空気がする方向へ向かったナルトの目に、今正に我愛羅の術に捕まっているザクの姿が映った。瞬時に判断する。
そしてナルトは、我愛羅の様子を窺っている男達より、ザクの命を優先した。
「いくら我愛羅に変化したとしてもチャクラがもつはずがない。それぐらい理解しているはずだろう」
「うるせえ!大体お前がドス達を誑かすなんて真似しなけりゃ…」
「心外だな。俺は選択を与えただけ。選んだのは彼らの意思だ」
「てめ……ッ!!」
カッとしたザクが胸倉を掴む。その涼しげな顔に一発お見舞いしてやらねば気が済まなかった。
だが突然、後頭部に襲いかかる激痛。
遠くなる意識の中、生身の左手と義手の右手でナルトの服にしがみつく。くそ、と悪態を吐こうとしたが、もはや声は出なかった。容赦なく降りてくる暗幕。
気を失う寸前、心配そうに覗き込む青い瞳がザクの脳裏にしっかり焼きついた。
昏睡し、倒れ伏したザクを気遣わしげに見遣る。皺が寄るほど握り締めてくる彼の指をそっと外し、ナルトは困ったように瞳を瞬かせた。
「なにもそんな殴らなくても…」
「ナルト様に手を上げる者は全て敵です」
気絶したザクを忌々しげに見下ろす。冷たい視線をザクに向ける君麻呂を見ながら、ナルトは内心嘆息した。
不治の病を治してから君麻呂は益々ナルトに傾倒している。欽慕の念を一層燃やす彼に、どこで間違えたかな、とナルトはぽりぽり頬を掻いた。
「そもそも助けられた恩を仇
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