stay night
04Wahrer Name
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黙り込むセイバーを見かねた士郎が、口を開いた。
「夕璃、お前の信じる正義って何だ?」
「全ての人が互いに許せて、皆が笑顔の世界。別に一生笑っていられる世界を作りたいってわけじゃなくて、悲しい時は誰かが一緒に泣いてくれて、嬉しい時も誰かが一緒に喜んでくれる。そんな一人きりがいない世界を作りたいって思いが正義かな」
恥ずかしそうに言う夕璃だが、ただの正義の味方に憧れている士郎から見れば凄いことだった。
しっかりと自分の意思を決めて動いているということなのだから。
「俺は、正義の味方になりたいんだ」
その呟きを聞いたアーチャーが怪訝な顔をするが、それ以上に夕璃が苦笑していた。
「何だよ。子供っぽいとでも思ってるのか?」
だが違う。夕璃はそんなことでは笑わない。
「違うんです。正義の味方なんてなれるわけがない」
断言した夕璃に対してもアーチャーは怪訝な顔をした。
「正義の味方は確かに凄い夢です。でも、それはその時悪事をしていない人から見れば」
夕璃の顔は悲痛に歪んでいた。
「その時悪事をしていた人から見れば一方的な虐殺者。関係がないのに相手の言い分を聞かずに悪と決めつけ、殺していく魔の人物。小さい頃は悪の敵を倒す正義の味方に憧れましたけど、今では虐殺者にしか見えない。ただの虐殺者を好きになることなんて……できない」
黙り込む士郎に対し、夕璃は悲しそうな顔をした。
「それに、正義の味方がいつも助けてくれるなんてありえないんだよ」
はっとする士郎。
確かに士郎は正義の味方によって助けられた。
だが夕璃は違う。助けてもらうことなどなく、たった一人生き残ったということで蔑まれて生きてきたのだ。
そうたった一人で。
「俺は帰ります。もう話すこともないでしょう」
去ろうとしてあ、と止まった。
「聖杯戦争が終わったら、お茶会とかだったら大歓迎ですけど」
手を振って出ていった夕璃の後を、ストライカーがついていった。
「……虐殺者か」
「自分の決めた道を信じて進む……」
二人の男女が夕璃の言葉によって、少し報われた。
家に戻ると、金髪の男性が立っていた。
「誰ですか?」
「我に名乗らせるとは……まぁいい。今回は勧誘で来たのだ」
「勧……誘?」
怪訝な顔をする夕璃に対し、金髪の男性は不遜に笑っている。
「我の臣下に下れ」
ライダースーツは金色の鎧に代わり、その姿を見たストライカーが反応する。
「サーヴァント!?」
「その様な下種な存在ではない。既に受肉している」
完全に見下した態度。
恐ろしいほどに絶対的な自信を持つ男。
「我が名は英雄王ギルガメッシュ。貴様が下るべき王だ」
最強を冠する英雄が、夕璃の前に立ちふさがった。
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