第一章 〜囚われの少女〜
物語の世界
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
見えなくなりました。
「そこのだんな、ちょっとお待ちよ」
そこへ声を掛けてきたのは、片目を蝶の眼帯で隠し、銀髪を高く結んだ人物でした。少年より悠に高い背、綺麗な色をしたショールの下にはたくましい腕がありました。
「なんだよ兄ちゃん、何か用か?」
その人は一瞬、顔をひきつらせたような気がします。それから笑いました。
「うふふ♪ ……その少年、あたしが頂いてもいいかしら?」
お屋敷のだんなは少々青ざめています。
「こいつをどうする気だ……。こ、こいつは俺が雇ってんだ。貰おうってんならそれなりの――」
「カ・ネ?」
何かがぎっしりと入った袋を目の前に差し出され、だんなは何も言えなくなりました。少年の腕をはなすと袋の中を確認します。
カチャカチャと音を立てるのは金貨でした。そこから手で宝石をすくい、目を凝らします。
「――いいだろう。ぼうず、世話になった。幸せにな」
その言葉の意味はわかりませんが、少年は背中を押され、だんなはお屋敷の方へ帰っていきました。
ぽつんと残された少年に、銀髪の人物は言います。
「突然で驚かせたね。アンタさっき、鳥の事気にしてただろ? そこで気に入っちゃったわけ。アンタみたいな優しい少年を探してたんだ♪」
その人は嬉しそうでした。でもそれだけの為に、だんなにあのような大金を渡したのでしょうか。
「あの……」
少年は何か言いたげにしています。
「ん? お金のことなら心配しないで。その分働いて貰うからさ♪」
それはよい意味ならいいのですが、少年にはさっぱりわかりません。その人の素性もわかりません。お金のことも、何か悪い事をしていなければいいのですが。今の少年にとっては、その人だけが頼りでした。
「あの、さっきの鳥を助けたいんです」
「そのために自分はどうなっても、構わない?」
少年の心は変わりませんでした。綺麗な蒼の瞳は先ほどのように、その人をまっすぐ見つめています。
「いいわね♪ アンタのそういう所。ますます気に入った! 磨けばダイヤになる」
笑顔でそう言われると、なんだか嬉しくて恥ずかしくなりました。
「――そうそう、アタシはライラ。よろしくねん♪」
−第二十二幕へ−
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ