第一章 〜囚われの少女〜
物語の世界
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ので、楽しい出来事はほとんどありませんでした。祭りを楽しむ事なんてもってのほか。
「そんな少年でしたから、その商店がとても不思議で、それはそれは素敵なものに見えたのです」
店には色とりどりの宝石、見たこともない果物が売られていました。不思議な香りを放つのは、虹色に光る木の実です。綺麗な色の物が目立ちますが、少年は鳥が売られているのが気になりました。
しかしその鳥は薄汚れ、弱っていました。ほうっておけばこのまま死んでしまうでしょう。
それでもそこにいる商人は、商品を売るのに夢中でした。頭にはちまきを巻いたその商人は、鳥のことを気にしているようすもありません。
クリーム色をした小さな鳥。薄汚れてはいますが、その鳥は売り物のようでした。しかし、今の小鳥を飼う人はいないでしょう。
見物に来ていた客と商人の会話が聞こえてきます。
「旅の途中で鳥が何匹も死んじまってなあ。砂漠が思うように越えられなくてよお」
残念そうに言いますが、その話はそこそこに切り上げ、他の商品を客にすすめます。弱っている小鳥の手当てはしないのでしょうか。
「ああ、なんてかわいそうなんだ」
少年はそう思い、小鳥をしばらく見つめていました。こちらを小鳥は、丸くて青い瞳で見つめます。
――商人のことをうらまないのかな? かごに閉じ込められて、こんな所に連れてこられて……。
そうしていると、こちらに気付いた商人は少年にこう言うのです。
「汚いガキだな。商売の邪魔だから、あっちへ行きな」
それはとても冷たい視線で。しかし少年はどうしても、鳥のことが気になって仕方がありません。そしてそこから離れないどころか、綺麗な蒼の瞳で商人を見つめて言います。
「おじさん、この小鳥、僕にください」
その言葉を聞いた商人は、顔を真っ赤にしておこりました。
「おじっ……な、なんだ! 物乞いか! 金もないのにこんな所に来るんじゃない!」
お金ならあります。けれどもそれは、お使いのお金でした。お屋敷のだんなのお金ですから、少年が好きに使うわけにはいかないのです。
「でも……」
小鳥が弱っている事をいいましたが、商人は全く相手にしてくれませんでした。
「おい、そこで何をやっているんだ!」
少年に向かってそう言ったのは、お屋敷のだんなでした。
「こんな所で油を売ってたのか! 使いはどうした!? ……まさか金を使ってないだろうな?」
だんなは少年を疑います。
「違います! お金ならこの通りここに」
少年は腰につけていた袋を出しましたが、それ以上の話は聞いてもらえず、だんなに腕をつかまれます。そのまま少年は、ひきずるようにして連れて行かれてしまいました。
「ごめんよ……」
このままではきっと、小鳥は死んでしまうでしょう。旅商人の団体は、すっかり
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