九幕 湖畔のコントラスト
15幕
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してた――――愛してるわ、今でも、これからも、ずっと」
フェイはヴィクトルの、因子化した黒い右頬にキスをした。
ヴィクトルの胸からフェイの腕が引き抜かれる。
血まみれの手には、時歪の因子と、最後の〈カナンの道標〉。黒いほうの歯車がフェイの手の中で砕けた。
「あ、ああ…! パパ、パパぁ!」
エルがヴィクトルに駆け寄り、崩れ落ちた。ルルもヴィクトルの頭の横にやって来る。
フェイは入れ替わりにヴィクトルから離れた。
ヴィクトルは泣き濡れるエルの頬に触れ、息も絶え絶えに、証の歌をハミングし始めた。
(お姉ちゃんのためだけの、特別な子守唄)
こうして聴こえる場所に立っていても、この唄はエルだけのものだ。ヴィクトルの優しいまなざしも最期の旋律も、全てエルにだけ注がれている。
二人と一匹だけが世界で、そこに3人目は存在しない。
(最後までわたしは分からず屋でバカな娘でしかいられなかった。パパ、ごめんなさい)
黒煙となって消失した父親の姿に、姉は天まで貫かんばかりの絶叫を上げた。
妹はただ、黙って佇んでいた。
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