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久遠の神話
第九十五話 中田の決断その四

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「僕一人ではね」
「出来ないですか」
「そうだよ、とてもね」
 こう言うのだった。
「だから皆本当にね。今回は有り難う」
「そうですか」
「私達がいて」
「うん、本当にね」
 この言葉は心からのものだった、言葉と目にそれが出ている。
「助かったよ。あの人達もね」
「目覚めるのですね」
「明日の朝に」
「絶対にね。ではね」
「はい、ご家族には」
「すぐに連絡します」
「そうしてくれたら有り難いよ。さて」
 ここまで話してだ、そしてだった。
 アポロンは大きく背伸びをした、そのうえでこう言うのだった。
「一気にやったけれどね。時間は短かったけれど」
「それでもですか」
「やはりお身体は」
「気力と体力を使ったからね」
 この二つを使った、それ故にというのだ。
「僕はこれで休むよ」
「あの、先生それでは」
「今回は」
「うん、休んでね」
 そしてだというのだ。
「また次の手術を頑張らせてもらうよ」
「今日はお疲れ様でした」
「素晴らしいものを見せて教えて頂きました」
「お礼はいいよ、医者が患者さんを助けるのは当然だよ」
 だからだ、礼はいいというのだ。
「休んでね、皆も」
「わかりました」
「それでは」
 彼等もアポロンの言葉を受けてだった、そして。
 彼等もまたそれぞれ休息に入った、彼等にしても三つの大手術の後の疲れがあった。例えそれが一瞬で終わったにしても。
 アポロンは聡美と共に病院を後にした、それで自分の家に戻る中で妹に対して明るい声でこう言ったのだった。
「これでね」
「あの方々はですね」
「助かったよ、そしてね」
「炎の剣士もですね」
「うん、助かったよ」
 そうなったというのだ。
「無事にね」
「それは何よりです」
「戦う理由がなくなったらね」
「もうそれで、ですね」
「人は戦わないからね」
 あくまで戦いたいが為に戦うというのは例外なのだ、加藤の様な者は。
「だからね」
「これで、ですね」
「また一人戦いから降りて」
「戦いが終わりに近付きますね」
「幸いね。それじゃあ」
「それじゃあですね」
「君達も覚悟をするんだ」 
 ここでだ、アポロンの言葉が強いものになった。その表情も。二人は街の歩道を歩きながらそのうえで話していた。
「若しもの時に備えて」
「若しもですね」
「そう、その時はね」
「お姉様とですね」
「強いよ、あの人は」
 セレネー、彼女はというのだ。
「だからね」
「はい、わかっています」
 聡美もセレネーの強さは知っていた、それで確かな顔で言うのだった。
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