少女の慟哭
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…お前の事は誰が支えるのだ」
言われて目を見開いた星は、くっくっと小さく喉を鳴らして苦笑した。愛紗を少し見誤っていたと感じて。
「私は秋斗殿に言われた事がある。言葉にしなければ本心なんか伝わらない、とな。ある程度読めたとしても、言葉にしなければ本当の意味では伝わらないと言う事だろう。彼の代わり、とまではいかないかもしれないが……彼に話せない事もあるのではないか? 弱さを吐き出さずに溜め込む姿は誇り高く美しい。しかしたまには戯言としてでもいいから零していいと私は思う。何よりも、今の星は助けたいと願っている白蓮殿と同じでは無いか」
諭すように言われて、星は大きくため息を吐いた。まるで厳しい母親のようだ、なんて心の中で呟きながら。
そしてぽつりぽつりと、漸く自分自身についての本心を口に出した。
「……私はどうやら意地っ張りで欲張りらしい。愛紗も気付いておろう? 私は彼の事を慕っている。隣に立ちたいと願っている。しかしな、この時に会ってしまえば私は趙子龍でいられなくなる。確実に頼って、泣きじゃくって、一人の女となってしまうだろう。まだ彼には弱い私など見せたくないのだ。彼に見せてきた私も本当の私であるがゆえ、その私にこそ惚れて欲しい。友であり、戦友であり、隣に立つ女でありたい。対等な関係こそ私は望んでいるのだよ」
その自嘲気味な声音に、愛紗は呆れたように息を吐いて酒を煽った。
「全く……意地っ張りにも程があるぞ。だが星らしいとも言える。星の言いたい事は分かる。秋斗殿は……朱里から聞いた事だが空のような人になりたいらしい。夜天の中で星は包み込まれず輝いてこそ、同じ場所にあれるというモノ……そういう事だろう?」
愛紗の言葉を聞いた星は茫然と見つめて、数瞬後に盛大に吹き出して笑い出した。
「くっ、あは、あははは!」
「な、何が可笑しい!?」
笑われて何か可笑しな事を言ったのかと慌てる愛紗の様子を見て、星はさらに笑い続けた。漸く落ち着いた頃合いで、目から先ほど溢れそうになったモノとは違う涙を拭って愛紗に目をやった。
「クク、いやな……愛紗がそのように詩的な事を言うとは思わなかったのでな。そうか……秋斗殿は空になりたいのか。なら私は真名の通りに一際輝く星となろう。包み込まれてなどやらん、あちらから懇願してくるまで、目に移る所で光り続けてやろうではないか」
不敵な笑みで言い切る星を見て愛紗の頬は緩んだ。その顔からは先ほどまでの昏さは消え、随分と落ち着いた様子に見えた為に。
「ふぅ……たまには戯言を話すのもいいモノだ。いやはや、新たな楽しみを見つけられた。おっと、杯が空だな。まだ夜は更けこんではいないし……愛紗よ、もう少し付き合って貰おうか。それとな、秋斗殿の事は心配せずとも大丈夫だ。口惜しい
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