少女の慟哭
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となったモノを自身の命令で、自分の為に死ねと言い切った。そこにはどれほどの苦悩と苦痛があったのか、私は少ししか共有する事が出来なかった。私とて、牡丹が捨て身の策を献策した時は止めたが、生存率を優先すればそれしか手が無く、牡丹の方が適していた為に耐えた」
つらつらと話す星は牡丹の笑顔を思い出して、胸に走る痛みからそっと手を当てた。今にも零れてしまいそうな涙を腹に力を込めて抑え込み、尚も続きを語る。
「敵が抜けてきた時、そこで我らはもう感情を抑える事が出来なかった。怒りと憎しみのままに獣と化した。あれほど憎しみに捉われた事は無かっただろう。虚しかったぞ……敵が引き返して行く様を見ても満たされる事は無く、ぽっかりと胸に穴が開いてしまった。牡丹の死亡報告が入って……私は急激な悲哀で人前であるのに涙が零れた。しかし……白蓮殿は涙を流さなかった。あれ程大切になった存在の死であるのに……何故なのか。決まっている。あの方は……っ……自身の優しさを、甘さを、本当の自分をっ……全て捨てようとしているのだ!」
震える声は大きくなっていた。今にも握りしめている拳を叩きつけてしまいそうになっている事に気付いて、星はゆっくりと、無理やり力を抜いていった。
「ここに来る前、髪留めを違うモノに変えていたのは見ただろう? あれはその証だ。しかしそれでは意味が無い。全く意味が無いのだ……。厳しい王足る公孫賛では無く、公私の別を分けられる白蓮殿のままで治めなければ……彼女自身が潰れてしまう。牡丹が望んだ彼女では無いというのに……死んでいった、生き残った全ての者が望んだ彼女では無いというのに……」
消え入るような声音を耳にして、唇を噛みしめる愛紗は……何も言わず。今自分が何かを言っても、星の心は救われないと理解して。
「私はあの方の覚悟を貶める事はもう出来ない。というか無理なのだ。臣たる私では……優しく甘い白蓮殿という少女は救えない。どうしても、一歩引かざるを得ない。白蓮殿本人が分け切れない為に。近くにいるだけで、その覚悟を示す為に心を高く持とうとするだろう。通常の人であれば時間が経てば分けられるのだろうがそれでは遅い。だから……彼に託したのだ。幽州で白蓮殿を変えたのは彼だ。白蓮殿という少女と公孫伯珪という王を一人に統合させたのは彼だけ。だから……秋斗殿ならまた救い出してあげられると願って……」
零れそうになる涙を抑え付けて、自分では救えないのだと杯の上に言葉を落とし、ぐいと酒を煽った。
しばらくの沈黙。後に……愛紗は目を開いて厳しい瞳で星を見つめる。
「星よ。それらは分かった。白蓮殿の心身を案じ、救われる為の判断をしたお前は間違いなく彼女の臣で、同時に友だろう。白蓮殿の事は安心していい。間違いなく秋斗殿ならば上手くやってくれる。だがな…
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