―闇魔界と振り子―
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人、雑魚が10人……大量だなぁ!」
――剣を持って鎧を着込んだ、異形の怪物が一人。
「や、闇魔界の戦士だ!」
ホーク・ビショップたちが叫ぶとともに、他の者を押しやりながら我先にと逃げようとする。だが異形の戦士――こちらの世界では《闇魔界の戦士 ダークソード》と呼ばれたモンスター――が発動した《カオス・シールド》に、退路を断たれてしまう。
「雑魚は黙って俺様のデュエルを見学してな! さぁーて……?」
闇魔界の戦士 ダークソードは天井から俺たちのいるフロアに飛び降り、俺とリリィの前に立ちはだかった。いや、俺というよりは……デュエルディスクを持ったリリィに、か。
「俺様の名は闇魔界の軍勢が一員、《オルネッラ》! テメェらは俺様の出世の生贄になってもらおうかぁ!」
戦士というよりはチンピラのような性格の《オルネッラ》が、リリィに対してデュエルディスクを展開する。今【機械戦士】がなく、俺に戦う力が無いことがもどかしい……!
リリィもそれに緩慢な動作でそれに応じたものの、いつまでもデュエルディスクを展開する様子はなく、構えたまま身体が震えている。無表情な顔もよく見ると、薄くだが暗い表情に包まれている。
彼女は――怖がっているのだ。
「どうしたぁ、早くデュエルディスクを展開しなぁ!」
「そ、そうだ! 早く追っ払っとくれ!」
オルネッラとホーク・ビショップの二人から罵詈雑言がリリィに飛び、彼女はギュッと目を瞑りデュエルディスクを展開しようとした。……だが、その腕にもうデュエルディスクは装着されていなかった。
「規格は旧型と同じ……やれるか」
何故なら俺が代わりに装着。そしてもう展開しているからに他ならない。……デュエルモンスターズの精霊のみにしか使えない、特別なデュエルディスクということではなく、エドが使っている物と共通規格のようだった。
「何を……してらっしゃるんですか」
「俺だって少しは腕に覚えがある。任せてくれ」
少なくともデュエルの前に震えているよりは……とは言わないが。今このデッキが、どういったデッキなのかも分からないが……俺はここで捕まるわけにも、死ぬ訳にもいかない。
「この異世界のデュエルは……命がけなのですよ。わたしのデッキも……拾い集めたデッキで、戦力になるとは思えません」
「もうその男はデュエルディスクを展開したぁ! 外野が何を言おうが何の意味をなさないんだよぉ!」
オルネッラが声を張り上げてリリィの忠告を掻き消す。命がけのゲーム? もう闇のゲームで経験していることだ。拾い集めたデッキ? ……そもそも俺の始めてのデッキは拾い集めたデッキだ。
「問題なんてない……!」
半ば自分に言い聞かせるかのように呟く
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