―闇魔界と振り子―
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ーズの精霊たちから、唯一俺という闖入者の下へ歩み寄って来てくれたのは、白衣を着たメガネの女性……片腕にはデュエルディスクが装着されている。それだけでは俺と同じく人間に見えるのだが、その白衣の背中から生えている天使のような翼がその感覚を否定する。
「わたしの名前は……リリィ。お身体は……大丈夫ですか?」
身体を心配するかのような台詞とは裏腹に、あまり彼女の表情は変わらない。それは無愛想を通り越して、感情がないかのように感じられた。
「あ、ああ。それよりここは一体……そうだ、明日香を……俺と同じくらいの背格好の、金髪の女の子はいないか!?」
みっともないぐらいに慌てた俺に対し、リリィと名乗った白衣の天使は「落ち着いて……ください」と先手を制する。ついバツが悪くなってしまい、一度考えを纏めて落ち着こうとしたものの、どうにも情報が足らずに考えをまとめるという段階ではない。
「順番に……お話し致します」
慌てふためいている俺に代わり、むしろ落ちつきすぎたリリィからこの状況の説明を聞く。……どうやら事態は、俺が思っている以上に深刻のようだ。
この異世界は、俺の予想通り《暗黒界》であるらしく、最近他の世界の住民が集められているのだという。リリィやこの廃墟にいる精霊たちもそうであり……もちろん、俺も同様だ。そしてここの本来の住人である《暗黒界》の住人は、他の異世界へと出発していき……《デュエリスト狩り》を行っているらしい。
「デュエリスト狩り……?」
「《覇王》。そう呼ばれている暗黒界の首領が……それを指示しているそうです」
その《覇王》という存在を聞くとともに、脳内にマルタンの姿をした怪物が浮かび上がっていく。自然と拳に力が込められていくが……不思議そうなリリィの表情を見て――無愛想なら無愛想なりに表情はある――、説明の続きを促した。
……そして先の住人である《暗黒界》を今率いているのは、《闇魔界》と呼ばれているデュエルモンスターズの精霊群。彼らもデュエリスト狩りを行っていて、この世界に来たデュエリストを……いや、デュエリストでなくとも狩っているらしい。
そうして生き残りはこうして、闇魔界の軍勢から隠れ暮らしている……ということだ。ここもこうした隠れ家の一つであり、近くで倒れていた俺をリリィが発見して看病してくれたとのことだ……軽く数週間は気絶していたようたが。
しかし、俺のデュエルディスクは十代とのデュエルで大破し、先程からただの重石にしかなっていない。【機械戦士】もデュエルディスクの故障の影響でどこかに消え、デッキホルダーに入れていたはずのもう一つのデッキも、盗まれたか落としたかは知らないが……どこにもない。
「……分かった」
「これから……どうなさるのですか?」
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