第52話 花粉症対策は万全に!
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きていくしかないのだ」
腹を擦りながら縋り寄ってくるなのはに対し、神楽が目尻に涙を浮かべながら天を仰ぎ己が不憫さを呪っていた。そんな中、父親役の銀時は未だに【ちゃ〜ん】とやる気が全く感じられない言葉を並べていた。
その光景を見ていた新八は酷く呆れ果てていたのは至極当然の極みだったりする。だが、ヘドロは違っていた。
なんと、目元に手を当ててしくしくと泣いているではないか。どうやら三人の下手な芝居が効いたようだ。これならば隙をついて回覧板を渡す事が出来る。今がチャンス。これを逃せば次にチャンスが回ってくる事は確実にない。
「すいませぇぇん! 回覧板でぇぇっす!」
大声を発し、新八は走った。三人の命懸けで作ったこのチャンスを無駄にする訳にはいかない。此処で決めねば男が廃るのだ。
だが、その時突然足に違和感を感じた。履いていた草履の花緒が突然音を立てて切れてしまったのだ。思い切り前のめりに倒れ込む新八。軽く顔面から地面に叩きつけられたがそんな事気にしてられない。早く回覧板を届けなければならない。
ところで、下駄や草履の類の花緒が切れるのは不吉の予兆と言われるのが世間一般の理だったりする。今回のそれもバッチリそうであり、花緒が切れた人物、つまり新八に不吉が舞い降りた。それは、新八が持っていた筈の回覧板が彼の手元を離れ、転んだ拍子に勢いづき宙を舞い、そのまま渡す筈だったヘドロの顔面に叩き付けてしまったのだ。回覧板の分厚い板の角の部分がヘドロの目元にジャストミートする。気持ち良い音と共に銀時、新八の血の気の引く顔が其処にあった。
***
薄暗い部屋の中でせっせと包丁を研ぐ。一種のホラー演出としてはバッチリな内容だったりする。増してや、その包丁を研いでいるのが恐ろしい風貌をした巨人であれば尚更恐ろしいと言える。
「いやぁ、すみませんねぇ。わざわざ回覧板を届けていただけるなんて。ご近所にあいさつ回りした甲斐がありましたよ」
とても嬉しそうに包丁を研いでいるヘドロ。そして、その後ろでは万事屋メンバー全員が正座のままヘドロの家にご招待されていた。
と、言うのもヘドロ曰く回覧板をぶつけられた事は大して気にしていないらしく、寧ろわざわざ届けてくれた事に大層感謝したらしくお礼として食事をご馳走してくれると言うのだそうだ。
だが、それを待っていた銀時達の顔色は良くなかった。何故なら、その食事に自分達が食材として使われるかも知れないと思っていたからだ。
「やばいよ、マジでやばいよこれ。どれ位やばいかって言ったらマジでヤバイよこれ」
青ざめた表情で銀時が淡々と語っている。まるで死刑執行を待っている受刑者の様な顔をしていた。
無論、それは新八も同じだったりする。何せ、回覧板をぶつけた本人なのだから
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