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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九話 踏絵
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と容易で有る事をもう一度言った。
『先ず今回の戦争で貴族連合軍を殲滅する事です。最低でも八割は撃滅する必要が有りますね。それと帝国との間に和平を結ぶ事。それが出来れば国債の償還は可能です』
“和平等馬鹿な”、“論外”と言う意見が何処からか出そうなものだが十二兆帝国マルクが絡んでいる。皆、無言で顔を見合わせていた。
「どういう事かな、もう少し詳しく説明してくれないか」
トリューニヒトが問い掛けるとヴァレンシュタインが軽く笑みを浮かべた。
『貴族連合軍を殲滅すれば門閥貴族は決定的に力を失います。そうなれば弱体化した帝国の正規軍でも十分に勝てる。帝国政府は門閥貴族を取り潰し彼らの領地、財産を接収するでしょう。帝国の財政状況は一気に好転します』
「……」
『償還期限は有りますが個人じゃありません、国家なんです。厳密にこだわらなくても良いでしょう。こちらが無理な償還を求めず毎年二千億帝国マルク程度の償還にすれば十分に国債の償還は可能だと思いますよ。完済するのは六十年後ですね、一千にすれば百二十年です』
なるほど、そういう事か。言っている事は分かる。しかし完済に六十年? 百二十年? 途方もない話だ、思わず溜息が出た。私だけじゃない、皆が溜息を吐いている。
「しかし払う能力が有るのと払う意思が有るのは別だろう。誰だって無駄な金は払いたくない、そうじゃないか」
私が疑問を提示するとヴァレンシュタインが苦笑を浮かべた。
『確かに無駄な支払いは誰もしたくないですね。ならば意味の有る支払いにすればいいでしょう』
意味の有る支払い?
『帝国は今政治的に不安定な状況に有ります。ブラウンシュバイク公達には戦争をしているような余裕は無いんです。同盟と和平を結び国内問題に専念し帝国を立て直したいと考えている。そのために邪魔な門閥貴族をフェザーンに送り込み同盟の手で片付けようとしています』
その通りだ、皆が頷いている。
『改革は長期間に亘って行われるはずです。その間帝国は和平を必要とする。和平を結びながら国債の償還を拒否すれば両国の関係は悪化しかねない、特に同盟市民が騒ぐでしょう。帝国にとっては払った方が和平を維持しやすいのです、同盟も和平の維持を市民に説得しやすい。まあ安全保障費とでも考えれば良いですね』
なるほど、和平を維持すれば金が入って来るが戦争を選べば出費が増える。和平を維持した方が暮らしが楽になるという事か。帝国も和平を維持した方が改革に専念できる、国内が安定する。金で和平が買えるなら、それによって国家が豊かになるなら二千億帝国マルクは高いものだとは言えない……。
なるほど、同盟市民にどうやって和平を受け入れさせるかという問題があったが六十年間帝国から金が貰えるというのは悪くない。実際に二千億帝国マルクが入ってく
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