始まり 2
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れた顔は、目も当てられない程に苛酷なものがあった。
「おい!! てめぇっなに顔を逸らしてんだよっ!? こっち向けやっ!!」
店内に響き渡る怒号で吠え、彼は胸倉を掴みながら俺の首を激しく揺らす。彼の言うとおりに俺は顔を彼の方へと向けるが、目の前まで寄せてくる彼の刺激臭まみれの顔に耐えきれず、嗚咽する。そして、俺はその流れで思わず言ってしまう。今の彼に対して禁句とも言える発言を。
「く・・・くさっ。おえっ」
汚れた彼の目前で嗚咽し、この事態を巻き起こした原因である俺が彼に臭いと言い放つ。口を滑らした俺の悪辣な言葉を聞き逃さなかった彼は、再び沈黙し、何かを溜めるようにぴくぴくと上半身を震わせる。突然と変わった彼の威勢。それが俺に対する度を越えた怒りなのだという事は、先程とは明らかに違う胸倉の締め具合で言葉無くしても感じ取れた。眼光人を射るという言葉があるが、彼のそれはもはや人を圧倒させるようなものではなかった。血走る眼、瞬きすらせず一点に集中する黒い瞳。彼は俺が言葉を放ってから未だ無言だが、目は口ほどにものをいうのはどうやら事実らしい。ぐつぐつと煮え滾るような怒り以外の感情が存在しない今の彼の心の中、爆発寸前というのが目を見ればそれが嫌でも俺の中へ流れ込み伝わってくる。
「あ・・・あのぅ」
俺はこの空気と臭いと彼の熱すぎる視線に耐えきれず、様子を窺う(うかが)ように声を掛けた。
「殺す」
幻聴ではなく、俺が難聴という訳でもなく、実際に聞こえる嫌悪すべき言葉が俺の耳に届いた。例え耳が正常であっても、自分の耳のどこかがおかしいのだと疑いたくなるような言葉を聞いて、俺は真剣に耳を塞ぎたくなった。
「えっと・・・あの・・・」
だが俺は現実を受け入れず、願うようにして彼が何て言ったのかもう一度俺は聞こうとするが。彼の顔色を窺う限り、怒りに満ち満ちている様子が判断できた。これは安易に言葉を掛けられる状況ではないと察した俺は、一度言葉を濁した。彼はいつ爆発するのか、それはもはや見当がつかない。まるでニトログリセンを扱うように、俺は脅えながらも慎重に、細心の注意を施しながら俺は再び聞く行為に出た。
「すいません。あの・・・」
「ぶっ殺す」
意を決して聞こうとした俺の勇気は、寡黙に爆発する彼の怒りによって一蹴された。
「えと・・・」
「ぶっ殺す、ぶっ殺す、ぶっ殺す!!」
野蛮な言葉を連呼する彼を見て、ようやく俺はある間違いに気付かされた。それは、彼の導火線にはとっくのとうに火が付いていて、さっきから音を出さずに彼の中で何回も爆発していたということだ。この間違いに気付いたという事は、いつ爆発するか分からないと彼を先程から危惧していたが、それは全て勘違いだったという事であり。願
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