第百五十六話 加賀平定その三
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「本願寺の忍達ですな」
「雑賀衆は加賀にも来ることがありまして」
「その道を使ってですか」
「忍道をです」
まさにその道を使ってだというのだ。
「紀伊から摂津、加賀にまで来ております」
「その道は我等だけが知っております」
「ですから我等もその道を使って行き来出来ます」
「織田家に知られずに摂津まで行けます」
「では」
その話を聞いてだ、龍興も明るい顔になって答えた。
「それがしも」
「はい、斎藤殿をお誘いしようと思っていました」
「織田家と戦われる方を」
「では共にですな」
「摂津に向かいますか」
「共に石山まで向かいましょうぞ」
龍興はこう彼等に答えた。
「それでは」
「はい、では今より」
「摂津に向かいましょうぞ」
「織田家が摂津に入る前に」
「そしてまた戦いましょうぞ」
こうしてだった、龍興と加賀の主戦派は尾山御坊から摂津まで雑賀衆の忍道を使って向かった。だがこれは今は信長は知らなかった。
信長は大軍を率いて尾山御坊に向かう、その報を聞いてだった。
尾山御坊の門徒達はだ、いよいよ言うのだった。
「もう戦をすることもないぞ」
「うむ、降ろうぞ」
「村に帰り田畑を耕そう」
「戦をしても意味がないぞ」
「それではな」
こう話す、そして。
僧侶達、残っている者達もこう言うのだった。
「戦なぞ意味がない」
「法主様も言っておられる」
「ではじゃな」
「うむ、織田家に講和を言うか」
「降るか」
「それがよいな」
主戦派が去ったことも大きかった、彼等はもう織田家と戦うつもりはなかった。それは民達なら余計にであった。
彼等は織田家が来るとだ、使者を出した。信長も彼等と会った。
使者の僧達はこう信長の前で彼に言った。
「願わくば民はお許し下さい」
「あの者達に罪はありませぬ」
「ですからここは、です」
「我等の首は差し上げます」
「ですがあの者達は」
「わしの考えは聞いておろう」
信長は彼等の前に座したまま応える、場には織田家の諸将も揃っている。その本陣の奥で会っているのだ。
信長はその場でだ、こう彼等に返した。
「降りそれぞれの村に帰ればな」
「それでよいと」
「民達は」
「罪にも問わぬ」
一切というのだ。
「帰り田畑を耕せ」
「では」
「あの者達は」
「御主達もじゃ」
信長は僧侶達自身にも告げた。
「それぞれの寺に帰るがよい」
「我等もですか」
「そうして宜しいのですか」
「うむ、帰ってじゃ」
そしてだというのだ。
「民達を教え救うがいい」
「左様ですか」
「我等もそうしてよいのですか」
「では、ですか」
「我々も」
「うむ、ただ今回だけじゃ」
信長はこのことも言い加えた。
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