第一章
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第一章
紫と赤
新進気鋭の画家チャーリー=マクローリンは悩んでいた。何に悩んでいるかというと画家であるから絵にあった。しかもこれはかなり深刻な悩みであった。
「満足する赤がない!?」
「そうなんだ」
彼は言うのであった。親友であるイラストレーターのコリン=ウィルソンに対して。彼等が親友であるのはどちらもアフリカ系であり同じテキサス生まれだからである。今はお互い成功してこのロサンゼルスで暮らしている。今そのロスのあるハンバーガーショップで窓際の席に向かい合って座りながら話をしているのだった。チャーリーはそのバスケットボーラーを思わせる痩せた長身の上にある人懐っこい顔を曇らせてコリンに話しているのであった。
「どうもね。いい色がない」
「赤っていっても色々あるけれどね」
コリンはコリンでアメリカンフットボーラ−の様な身体にいかつい顔をしている。髪型はチャーリーがアフロでコリンは短く刈っている。どちらも中々独特の外見である。そのコリンが言うのであった。
「とりあえずどんな赤が欲しいんだい?」
「これまでにない赤なんだ」
チャーリーはまた言う。
「そう。大人のね。夜にあるような赤なんだけれど」
「夜にあるような赤」
そう言われても訳がわからず首を捻るコリンだった。
「そんな赤あったかな」
「といってもクリムゾンレッドじゃなくてね」
まずそれは否定した。
「ああいった。何て言うかな。如何にもって赤じゃなくて」
「隠微な感じの夜の赤じゃないんだね」
「そうなんだよ」
チャーリーは言う。
「確かに隠微さはあるけれど」
「それだけじゃなくて?」
「ワインレッドがあるじゃない」
今度出したのはこの赤であった。
「そういう感じなんだけれどね」
「けれどワインレッドじゃないと」
「そうなんだ」
どうにも難しいことを言うチャーリーであった。イラストレーターであるコリンでもどうにもわからない話になっていたがそれでも親友の話を聞くコリンだった。
「何ていうかな。そういうのじゃなくてね」
「新しい赤かな」
「具体的に言えばそうかな」
チャーリー自身も首を捻っている。
「やっぱり。そうなるかな」
「新しい赤ねえ」
「何かないかな」
彼はまた言う。
「それを今考えているんだけれどね」
「色々やってみているんだよね」
「勿論だよ」
チャーリーはコリンの今の言葉に対して答えた。二人は買ってあるハンバーガーやコーラをそのまま横に置いて話を続けている。
「本当に色々とね。自分の血を見てその赤を再現してみたり」
「また随分と危ないことをしていないかい?」
「ああ、ちょっと見ただけだから」
血のことにはこう述べるだけだった。
「だからね。そんな
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