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群衆
第二章
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。とりわけペストでは人口の三分の一が死んだとさえ言われているのだ。
「それを見て私は思ったのです。彼等を救わねばと」
「それでですか」
「そうです」
 それこそが彼がここにいる理由であったのだ。
「ですから。私はここにいるのです」
「ですが」
 しかし司祭はその老人に対してまた言うのだった。言わずにはいられなかった。
「その街の人々は貴方を嫌い憎んでいます。現に今までも」
「ええ」
 何があったのかは他ならぬ彼が最もよくわかっていることであった。表情を消して頷いてきたのであった。
「わかっています」
「石を投げられるのはいつものことで」
 それが普通であった。
「武器を手に襲い掛かられたことも何度もありましたな。今にしろ」
「またあったのですか」
「はい、そうです」
 正直に先にあったことを述べた。
「一刻も早くこの街を去られることをお勧めします。パリならば教養のある貴族も多く」
「しかしです」
 だが老人はここでまた言うのであった。
「しかし?」
「そうです。この街には今も疫病があります」
「ええ」
 その通りであった。この街もまた甚だ汚く疫病がある。それを広めているのがこの老人であると言われているのだ。真相は殆どの者が知ろうともせずだ。

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