自称王と他称王
三話
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学院に着いた時、既に午前の部は終わっており、後は午後の部を残すのみとなっていた。
今は昼食の時間だが残された時間はそう多くない、アインハルトは遅れないように教室へ急ぐ。
対しアレクの足取りは重く、この後に及んでもサボる事を考えているようだった。
「早くしないと遅れますよ」
「だりぃ……」
ルームキーも未だティアナの手にあるので状況は詰んでいるというのに、この男はまだ諦めていないのか。
仕方ない、とアインハルトはアレクの腕を掴み、引っ張るようにして歩く。
ティアナからも頼まれているので目を離す積もりも無い。此方でも手合せ出来るように取り次いでみる、等と言われれば尚更に力が籠る。
「ちょ、おまっ!?」
後ろで何か騒いでいるが、アインハルトは聞く耳を持たない。
そして、通り掛かる人の目も気にしない。元々虹彩異色の珍しさから好奇を含む視線には慣れている。今回は中等科に上がったから上級生が珍しがっているだけだ。アインハルトだけはそう判断していた。
だが、当然ながら道行く人々は違う。
特に中等科一年は殆んどが初等科からの顔馴染み。新生活三日目にして学年屈指の美人と問題児が連れ立って、しかも遅れて登校してきたとなれば恰好のゴシップネタだ。去年の屋上呼び出しもあり、二人に届かない所で勝手な憶測が飛び交う。
その中で特に反応を示すのが思春期最中の女生徒達だ。優等生と問題児のラブロマンスは少女漫画の鉄板の一つなのだから。
故に、少女漫画から飛び出てきたような二人の関係が堪らない。
「ストラトスさん、ごきげんよう!」
「は、はい。皆さん、ごきげんよう」
「遅かったね? ナニがあったの!?」
「なんでアルヴァークくんと一緒だったの!?」
「え、あの、その……諸事情で、アレクさんとは……」
『アレクさん!?』
教室に現れたアインハルトに女生徒は颯爽と群がり、怒涛の勢いで質問を飛ばす。そして、逃げ腰になりながら生真面目な性格なので律儀に答えるアインハルトに一々反応し、勝手な妄想を繰り広げていく。
一見、孤独そうなアインハルトだが、意外にもクラスメイトから愛されていた。
◆ ◇ ◆
「あ、終わった?」
「ええ。チンクは……」
「居るぞ」
所用で席を外していたティアナが戻ると、既に別のテーブルに待ち人のチンクは来ていた。
だがチンクだけではなく他にもウェンディとディエチ、オットーとディードの姿もあった。済まなそうなノーヴェの顔で、チンク以外は自発的に来たのだろうと判断できる。
「賑やかになりそうね」
「すまん、止めはしたのだがな。一応、大人しくするようには言ってある」
分別は出来るので、まあ大丈夫だろうとティアナは割切った。
「それよ
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