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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第85話 聖戦対策
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葉は難し過ぎて判らないでしょうが。
 俺は知って居ますけどね。

 地球世界での贖宥状とは、カトリック教会が発行した罪の償いを軽減する証明書。免罪符、免償符、贖宥符とも言われている代物です。
 元来、キリスト教では洗礼を受けた後に犯した罪は告解によって許されるとしていたのですが……。
 ところが、中世以降、カトリック教会がその権威によって罪の償いを軽減できるという思想が生まれてくる。これが贖宥。

 そして、贖宥状とは、イスラームから聖地を回復するための十字軍に従軍したものに対して贖宥を行ったことがその始まり。
 従軍できない者は寄進を行うことでこれに代えたのです。

 まぁ、ぶっちゃけて言って仕舞えば、地獄の沙汰も金次第。現世の罪も、教会にお金を積む事でチャラに出来ると言う超便利なシステムの事。
 発行する側も、簡単にお金を集める事が出来る代物なので、調子に乗ってジャンジャン発行して居た連中も存在しますから、不信心な俺からするとかなりアレなシステムなのですが。

「つまり、姉上はゲルマニアがかなり早い段階から聖戦の準備を始めていた可能性が有る、……と言いたいのですか」

 三年前。確か、ゲルマニアの皇帝にアルブレヒトが即位した直後ぐらいからの事ですか。
 以前にタバサに聞いたこのハルケギニア世界のざっくりとした歴史の説明を思い返しながらそう答える俺。
 いや、アルブレヒトと贖宥状の繋がりはもっと深い可能性も有りますね。

 何故なら彼は、元々がマインツの大司教に就いて居た人物。其処からロマリアの特免を得て還俗し、最終的にはゲルマニアの皇帝まで登り詰めた人物ですから。

「可能性の問題さ。そもそも、アルブレヒトと言う人物は梟雄と言っても差し支えがない人物。そんな人間が何時までもゲルマニア一国の皇帝で納まっている心算はないだろう?」

 実の兄を暗殺してブランデンブルグ選帝候の位を得、其処から更に謀略の限りを尽くしてゲルマニアの皇帝の位に就いたと言われている人物ですから、確かにアルブレヒトには梟雄と言っても問題のない一面は存在して居ますね。
 実際、表立った戦は一切していないのですが、彼の政敵はすべて不可解な死を遂げている点も、彼の黒いウワサの論拠と成って居るようですし。

「そうすると、今回の聖戦は領土を増やしたいゲルマニアと、聖地を奪還したいロマリアとの二か国の思惑が重なった事により発生した事態だと言いたいのですか、姉上は」

 純粋な宗教的な心情から発生した聖戦よりは、こちらの予測の方が俺としては背後を理解し易いので有り難いと言えば、有り難いのですが。
 それに、以前に俺の目の前で緑色の液体に変わって仕舞った少年が今際の際(いまわのきわ)に残した言葉。聖エイジス三十二世の野望を阻止しろ、と言う言
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