第5章 契約
第85話 聖戦対策
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人間のそれよりも強くなるのも事実。
能力的な面から考えると一長一短が有るのですが……。
俺の問い掛けを聞いた瞬間、イザベラが笑った。いや、嗤った。
「シャルロットに出来て、あたしに出来ないって言うのかい?」
不敵な笑みに続く言葉は、それに相応しい言葉。これで彼女の覚悟は理解出来ました。
ならば、これ以上、問い掛ける必要はないでしょう。
低い音を響かせてエアコンが僅かにその出力を上げた。年末……。いや、そろそろ冬至を迎えるこの季節。陽の落ちる時間は早く成り、センサーが室温の低さを感じ取ったのかも知れない。
さて、それならば次の仕事に掛かる必要が出て来ましたか。
そう考えて、座り心地の良いソファーから腰を上げようした俺。
しかし、
「待ちな。未だ話は終わっちゃいないよ」
そんな俺をソファーへと押し止めるイザベラ。その表情は先ほど戦車の描かれた羊皮紙を出して来た時と同じ表情。
何か続けざまに厄介事が降り掛かって来るようで非常に頭が痛いのですが。
これが、為政者の側に立たされると言う事なのかと、簡単に王太子の影武者役を引き受けるんじゃなかったと言う、正に、後悔先に立たずの言葉通りの思考に囚われる俺。
もっとも、こんな事は日常茶飯事。タバサの前では口が裂けても言えませんが、自分の中でだけなら、百万遍はウカツな、更にかっこ付けの自分に対して悪態を吐き続けて来ましたから。
リュティスに新たに建てられたノートル=ダムの大聖堂で行われた立太子の儀で晒し者に成った時などは特に。
そんな俺の気持ちを寸借する気さえ存在しない。……と言うか、俺が王太子の影武者で有る事さえ忘れたんじゃないかと言う……、本当の次の王に対して、国事に関する厄介事を告げて来る宰相の口調で言葉を続けるイザベラ。
「天文方から報告が上がって来た。西の蒼穹に新しい彗星が発見されたそうだ」
戦乱に向かう世界に於いては、ある意味相応しい象徴となる天体の存在を。
……と言うか。
確か地球世界で中世のヨーロッパでは、彗星は天体ではなく気象現象の一種と考えられていたはずですから、その点ではこのガリアの自然科学の分野は多少、地球世界よりも先に進んで居る可能性も有りますか。
しかし……。
「そう言うからには、今までの記録内に残された出現例はない彗星が現われたと言う事なのですか?」
少し腰を浮かしかけたが故に、やや浅くなった腰の位置を座りの良い位置に戻しながら、そう聞く俺。
それに確か、地球世界の例で言うのなら、彗星の観察は紀元前の昔から行われていたはずですから、このハルケギニア世界の六千年の歴史から考えると、かなりの観察記録が有るはず。
もっとも、その六千年の歴史とやらも話半分
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