第5章 契約
第85話 聖戦対策
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急場しのぎで設置されたエアコンが温い空気を吐き出し、体感気温自体は快適と言っても良い温度を維持して居るこの部屋。
しかし、何故か冷たい。
まるで、床自体が伝えて来る外気温の冷たさが、そのまま足元から這い上がって来るかのような妙な寒気を感じる……紙に支配された室内。
「そろそろ、御告げの夢に関する話題が民の間で大きく成り始めたよ」
ガリア北花壇騎士のみの肩書しか持って居なかった頃は執務机の前に立たされて任務の説明を受けるだけで有ったのが、今では部屋に設えられた上質のソファーに座る事を許された俺。
十二月、第四週、ユルの曜日。
今月のスヴェルの夜から始まった御告げの夢を不特定多数の人間に見せる作戦は既に十二日に達しており、更に、意図してウワサ話として流している情報。……神は聖戦を望んではいない、と言う情報と相まって、少しずつ、ガリアの民に取っては都合の良い情報が巷に間に広まって居ました。
もっとも、その大半が未だ半信半疑でしょうけど。
但し、新教に属する聖職者の夢枕にも聖スリーズは立って居ますから、この辺りに流れて居るウワサはかなりの信ぴょう性を持って流れて居るようです。
「今年の最後の夜。始祖ブリミルの降誕祭の前の夜にオーロラの幻を発生させる準備は整っているのでしょう、姉上?」
相変わらずの丁寧な……。どちらかと言うと他人行儀な口調で問い掛ける俺。
そう。流石に、本当のオーロラを発生させられるだけの神話的裏付けを持つ式神……例えば、ローマ神話の暁の女神アウロラや北欧神話的に言えばワルキューレ。中国の神話ならショクインと言う龍神は連れていないので、今回は単なる幻を見せるだけの行為と成るのですが。
それでもガリアの主要な都市の土地神の協力を得た上で発生させる幻ですから、ある程度の効果は有るはずです。
「蒼穹に紅い光の帯を発生させて揺らめかせるだけなら、夜の一族の手を借りれば難しい事じゃないよ」
自らも覚醒していないだけで、その一族の末裔であるイザベラが答えた。こちらの方は俺の設定がタバサの使い魔で有ろうと、ガリアの王太子で有ろうとも変わる事のない口調で。
そう。本来、このガリア辺りの緯度で見られるオーロラと言うのは紅い光の部分のみ。その紅い光が蒼穹に不気味に漂う様が、まるで血が流れる様を連想させるようで、戦乱や災害の予兆。神の怒りの現れだと言う伝承が生まれる事と成ったのです。
それに、確か地球世界の歴史上でも、第一回十字軍の遠征の直前にもオーロラが蒼穹に現われて、それが宗教的な熱情に浮かされた十字軍の遠征へと繋がったはず。
しかし、今回はそれを神は聖戦の発生を望んではいない、と言う夢との合わせ技で使用する。
更に、新年一
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