反董卓の章
第24話 「……もう、決めたから」
[13/13]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
は、少し逡巡した後――
「……姓は馬、名は正、字は仁義。盾二様に与えられた、馬正さんの名前です」
「………………そっか」
一刀はそれを反芻するように目を閉じる。
そして、自身の右手を胸に当て、固く握りしめた。
「我が名は北郷一刀……盾二の兄弟にて、相棒。半分に分けられた、現身。忠臣の鏡である、馬仁義殿に誓う。俺は貴方に変わり……必ず盾二を護る。貴方が示したように、我が身に変えても。心身ともに……例え盾二が道を間違っても、必ず俺が正す。貴方の名前が示す通り、正しく仁義を貫くように……貴方が導いた盾二を、今度は俺が引き継ぐ」
一刀の宣言に、孔明は顔を上げる。
一刀のその瞳は、まるで盾二のそれに瓜二つであった。
「だからどうか……どうか安らかに。本当に……ありがとう、ございました」
そして深く、頭を下げる。
その姿を見て……
「……っ…………っく…………っ………………」
孔明は静かに。
静かに…………涙を落とした。
―― とある兵士 side ――
俺はここ二日、飯も食わずに見張りを続けている。
俺だけじゃない。
他の奴らも、誰も、何も言わずに見張りを続けている。
その場所は、虎牢関の天幕の一つ。
中にあるのは俺達の至宝の宝。
だから誰に命令されるでもなく、皆が皆、自らそこを守ろうとする。
寝不足や疲労で誰かが倒れると、その者の代わりに誰かが見張りに立つ。
けど、俺は意地でもここを動かない。
せめてあと一刻、いや半刻でもいい。
少しでも長く、ここに居たい。
その天幕に訪れる人は多かった。
劉備様や関羽様、張飛様など怪我したままで、這いずるように中に入っていった。
そして皆がなんらかの誓いと共に、天幕を出て行く。
昨夜も宰相様と、軍師様の兄君という人が中へ入っていった。
だが、俺達が最も望む人は、まだこの場に現れない。
だから俺は、その人が来るまで立ち続けようと思っていた。
けど、さすがに限界らしい。
意識が朦朧として、視界が歪む。
他の皆と同じように、俺も倒れるんだろう。
せめてあと四半刻は保たせたかった……
そう思い、最後に顔を上げる。
そして、目を見開いた。
そして俺は安堵する。
それと同時に、頑張っていた他の連中の誰かが倒れる音が聞こえた。
立て続けに倒れる音を聞きながら、自分の意識が薄れるのを感じる。
けど、俺は満足だった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ