As 09 「舞い降りた紫炎」
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…だからといって、負けるわけにはいかない!
「おおおぉ!」
「はああぁ!」
気合の声と共に高速の近接戦が始まる。
双方ともほぼ足を止めた状態で、炎を纏った斬撃と打撃を雨霰のように繰り出す。だが互いに体捌きと打ち払いで防ぎ続け、通っているダメージは熱によるものだけだ。
「……ふふ」
炎が舞い散る中、無感情だった少女の表情に変化が現れた。それはこれまでに見せてきた冷たいものではなく、戦いを楽しんでいる者が浮かべそうな笑みだ。
その笑みを浮かべることを理解できる私は、少女と同じように笑みを浮かべているのだろう。出会いが違っていたならば、強敵と書いて友と呼ぶような関係になれていたのかもしれない。
いつまでも続けていたい気分もあるが剣と拳で勝負しているだけあって、あちらの防護服の腕部は消耗している。それに私が無事に撤退できる時間も残り少ない。
こちらの一閃を回避した少女が、正拳突きを放つ。それを私は鞘を使って迎撃。互いに同じ思考に至っていたのか、発生した衝撃に逆らわずに距離を取った。
「…………先ほどは簡単に倒せるようなニュアンスの言葉を言ってしまいましたが、ブランクのある今の状態では命の灯火が消えてもやり遂げるといった覚悟が必要なようです。撤回します」
「……私としては、ブランクがあるという言葉を撤回してもらいたいのだがな」
「残念ながらそれは事実ですので。……おそらくもうそろそろ局員が到着するでしょう。こちらは胸の炎があなたを倒して、更なる高みへと行けと告げていますから続けても構わないのですが」
ここで続けるかどうかを聞くのは、夜月の治療をいち早くしたいからだろう。この少女は一見合理的な考え方をしそうではあるが、夜月のように組織よりも一個人のほうが大切なようだ。
こちらとしても、そろそろ撤収しなければ危険だ。それに夜月を傷つけた本人ではあるが、彼の容態が気にならないわけではない。
「名残惜しいが、ここで引かせてもらおう。……私はシグナム、そしてこいつはレヴァンティンだ」
「……ではこちらも改めて、私はシュテル・スタークス。パートナーの名はルシフェリオンです」
「……おかしいかもしれんが、この勝負の続きを楽しみにしている」
レヴァンティンを鞘に納めながら言った言葉に、スタークスは返事を返さなかった。彼女は漆黒のデバイスを回収し、夜月を抱きかかえる。
スタークスはそのまま無言で立ち去ると思ったが、首だけわずかに振り返って口を開いた。
「再戦の約束をしたいのは山々ですが、私が現場に赴くのはおそらく今回限りです」
「……そうか」
「そう気落ちしないでください。あなたの前には、私ではありませんが必ず誰かが現れますよ」
テスタロッサだろうかと思ったが、この流れで彼女の名
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