As 09 「舞い降りた紫炎」
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けならば、全力でやれば間に合うはず。
この結論に至った私は、言葉ではなく斬りかかるという行動で返事を返した。しかし、少女には全く動揺は見られない。それどころか不敵な微笑を浮かべ、変形させたデバイスをこちらに向けていた。
「屠れ、灼熱の尖角……」
身体を捻りながら上昇した次の瞬間、一瞬前に居た場所を灼熱の閃光が走り抜けて行った。
――何て威力だ……魔力を炎熱変換させた集束砲撃。これが直撃すれば一撃で堕ちかねん。
これだけの魔法を私の動いた瞬間に放ったということは、こちらの答えは読まれていたということになる。だが回避できたのは大きい。
砲撃魔法は威力があるだけに発射するまでに時間が要る。またあれだけの砲撃が使用できるということは、この少女は砲撃魔導師のはず。近接戦闘に持ち込めれば、騎士である私のほうが格段に有利だ。
「避けますか……まあ予想の範囲内ですが」
焦りも恐怖も見えない無表情のまま、少女は無数の魔力弾を生成。拡散するように撃ち出したかのように見えたが、途中で一点を射抜くように軌道が変化する。
あの砲撃からして魔力弾とはいえ高威力のはず。弾速も狙いも一流だ。だが……こんなもので私の剣は止められん。
「はああぁぁッ!」
魔力弾を撃ち落しながら接近していく。眼前に来た魔力弾を落とすのと同時に、一瞬ではあるが視界がゼロになる。視界が回復したとき、その刹那を狙い済ました一撃がすでに飛来していた。
反射的に身体を捻ったことで直撃は避けられたが、横腹付近の騎士服を持って行かれた。痛みによって動きが鈍りそうになるが、奥歯を噛み締め接近を速める。
「もらった!」
「く……」
気合の一閃を放つも、デバイスを盾にされてしまった。だが初めて歪んだ少女の顔と伝わってきた手応えから、彼女のデバイスにダメージを与えられたことは確かだ。カートリッジを未使用の攻撃でも、あと何度かで破壊できるだろう。
一度懐に潜り込んでしまえればこっちのものだ。テスタロッサほどの機動力があれば距離を取れるかもしれんが、砲撃に魔力資質が偏っている以上はそれもできまい。
「はあッ!」
「――っ」
レヴァンティンが少女の頬を掠める。彼女の表情に感情が現るが、すぐさま無へと戻る。
「……ルシフェリオン」
少女の口が閉じた直後、彼女の手からデバイスの姿が消えた。いったい何を考えているんだ、とも思いはしたが、炎が少女の拳を包んだ瞬間に理解する。
「滅砕!」
気合と共に撃ちだされた炎のアッパー。攻撃直後だったとはいえ、仰け反らなければ回避できなかったほどの圧力と速度だった。
少女の一連の動きからして付け焼刃のものではない。あれだけの射撃・砲撃能力を有していながら接近戦もできるというのか…
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